『笑い男』収録、J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』
J・D・サリンジャーによる短編集『ナイン・ストーリーズ』を読んだ。まんまタイトルの通りで、サリンジャー自ら9編の短編をセレクトしている。
どの短編も、日常の他愛ないどうということのないやりとりがほとんどで、大きな盛り上がりもまずない。読んでいて、はっきり言えば退屈だ。そして短編特有の、突然の終了を迎える。ただ「どうということのない」やりとりの中に、不意に非日常の要素が放り込まれている。
ワタシがこの本を読もうと思ったのは、『バナナフィッシュにうってつけの日』『笑い男』の2編が収録されていたからだ。前者は吉田秋生のマンガ『バナナフィッシュ』の元ネタに、後者は『攻殻機動隊S.A.C.1st GIG』の元ネタに、それぞれなっている。
『バナナフィッシュに~』は、ホテルのプールで青年が少女にバナナフィッシュという奇妙な魚のことを話し、その後部屋に戻って寝ている妻の脇で拳銃自殺するという、ショッキングというか訳がわからないというか、そんなお話。この主人公やその家族は、他の物語でも描かれているようだ。
『笑い男』は、草野球チームで団長と呼ばれるチームのリーダーが、バスの中でメンバーに聞かせる作り話が「笑い男」の話で、メンバーは野球の後その話を聞くのが楽しみになっている。中国の山賊にさらわれ口許を引き裂かれた男がいつしか山賊のボスとなり、抗争を繰り広げ悲しい最期を遂げる。
ワタシはマンガの『バナナフィッシュ』は読んでいないので(アニメは観た)、ここでの短編とどうつながるのかは知らない。『攻殻機動隊S.A.C.』についてはだいたい知っていて、劇中発生するサイバーテロが「笑い男事件」と呼ばれている。ただ、より深く適用されているのは『ライ麦畑でつかまえて』の方で、「笑い男」については、このネーミングを引用したに留まっている(と思う)。
2024年2月3日追記
『攻殻機動隊Stand Alone Complex The Laughing Man』を観た。野球ネタが散りばめられていたり、アオイが施設の子供たちに「団長」と呼ばれていたことに気づいた。ネーミングの引用だけではなかったのだ。
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