聖戦士ダンバイン
『聖戦士ダンバイン』は、1983年から1年間放送されていたサンライズアニメになる。ワタシが住んでいた地域ではいったん放送打ち切りになるも、その後視聴者からの再開の声(というか抗議)を受けて復活。無事、最終話まで放送された。
大地と海の間に存在する世界バイストン・ウェルは、妖精フェラリオや人間(コモンと呼ばれている)らが住む世界だ。この世界の支配を目論む「ア」の国の王ドレイク・ルフトは、エ・フェラリオのシルキー・マウを脅して地上からショット・ウェポンらを召喚。ショットは、オーラ力を流用したオーラバトラーを開発する。
オーラバトラーのパイロットとして召喚されたショウ・ザマは、やがてドレイクの真意を知ってニー・ギブンの一行に身を寄せる。戦いは徐々に熾烈化し、フェラリオの長ジャコバは、オーラマシンとそれに関わるすべての者を、バイストン・ウェルから排除。戦場を地上に移し、ドレイクは地上の世界支配を企てる。ショウとニーの一行は、シーラ・ラパーナが指揮する「ナ」の国の軍に加わり、ドレイクを阻止せんとする。
『ガンダム』『イデオン』『ザブングル』というサンライズロボットアニメの流れを継ぎつつ、当時はかなり異彩を放っていた。まず継承の方は、人と人との戦争を描いていること、主人公に敵対するライバル的存在がいること、そのライバルがやがて仮面を被ること、主人公が乗るマシンが中盤で交代すること、『イデオン』ほどではないにせよ、最後には主要登場人物がほぼ全員死んでしまうこと、など。
では異彩の方だが、ダンバインをはじめとするオーラバトラーは、曲線のフォルムになっていて、昆虫を彷彿とさせる。そしてバイストン・ウェルや妖精のフェラリオという、ファンタジー要素をロボットアニメに適用するのは、かなり挑戦だと思う。ショウが日本人で、実家を吉祥寺に設定して描いているのも、新鮮だった。
本作は、どちらかといえば「悪」ははっきりしている。支配欲の強いドレイクや同盟を結ぶ「ク」の国のビショップが悪で、シーラや「ラウ」の国のエレ・ハンムが「悪」を食い止める勢力になる。ただ、ドレイクにも主義主張があり、妻ルーザこそが元凶という側面もある。ふたりの娘のリムル・ルフトは、母ルーザを殺そうとして返り討ちに遭ってしまう。
バーンへの対抗心を燃やすガラリア、ショウと共に召喚されてそのままドレイク側で戦うトッドなど、サブキャラも魅力的だ。常にショウと共にダンバインに乗っていたフェラリオのチャム・ファウは、うざいときもあったが、ショウにストップをかける役割も担っていた。
本作の放送と前後して大ヒットしたのが、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』だ。時系列ではナウシカ原作マンガ→ダンバイン→ナウシカ劇場版アニメとなるが、富野由悠季は『ナウシカ』を意識していたのだろうか。
OVAの総集編には、『New Story of Aura Battler DUNBINE』という続編が収録されている。『ダンバイン』本編は1980年代だが、それから700年後のバイストン・ウェルを舞台としている。肉体は滅ぶも精神は700年生き延びているショット・ウェポンが、バーンの転生ラバーンにオーラバトラーを与え、ショウの転生シオンやリムルの転生レムルらが食い止めんとする。
『New Story』は、本編終盤の壮絶さを思えば、おまけのような位置づけでしかない。しかし、こんにち乱立している異世界ものの原点が『ダンバイン』本編、プラス転生ものの原点が『New Story』になっていると思う。富野由悠季はバイストン・ウェルを舞台とする小説をいくつも執筆していて、氏のライフワークになっているそうだ。世界観を同じくするがパラレルワールドの『リーンの翼』は、Webアニメとして公開されている。
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