浜田省吾『ON THE ROAD 2011 “The Last Weekend”』

浜田省吾が2011年におこなったツアーのライヴ映像を観た。ワタシが所有しているのは、DVD2枚組プラスCD3枚組の初回限定盤だ。以下、DVDを中心に書く。

ディスク1および2は、ライヴ本編。『J.Boy』のリミックスをSEとし、スタンバイする浜田と、開演を待ちわびるファンの姿が交錯する。そして幕が落ち、『On The Road』でスタート。このツアーは「The Last Weekend」をテーマに掲げているが、断続的にリリースされてきたベストアルバムの締めくくり『the best of shogo hamada vol.3』が裏テーマにあって、ここに収録されている曲が、セットリストの中核を成していた。

バンドメンバーは、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、オルガン、トランペット、トロンボーン、サックスという基本フォーマットのほか、女性サックスuko、ストリングスが加わり、総勢22名の大所帯だ。サックスがふたりというのは珍しいが、メインはやはり古村で、ukoはサブを固めていた。

浜田不在のインストがあったり、バックドロップの映像にアニメーションを導入したりと、実験的な試みもあった。『Money』など、いくつかの曲では画面が5分割され、このときの浜田のほか、80年代の白Tシャツにバンダナ姿の浜田も組み込まれていた。

そして、『J.Boy』だ。長い長いイントロの中、浜田は1986年にこの曲を書いたときの想いを語った。バックの映像には、アルバムジャケ写の浜田が映し出された。

このツアーは、2011年の4月から10月におこなわれた。つまり、3月11日の東日本大震災を受けていて、本来なら浜田のデビュー35周年を掲げるところだが、ツアーとしての意味合いが変わってしまっていた。未曾有の状況に見舞われた日本、日本人が、今こそこの困難に立ち向かうべきだと、浜田は語った。そして、「show me your way,J.Boy !!」というシャウトを皮切りに、歌が始まった。

映像は大阪やさいたま公演などで構成されているが、中軸になっていたのは5月22日の横浜アリーナ公演で、『J.Boy』も横浜が採用されていた。そして、ワタシもその日その場にいた。このときの浜田渾身のパフォーマンスに、終盤の映像に老若男女の日本人の顔がランダムに映し出されたとき、体に電流が走った。てっきり、この状況はどの公演でもおこなわれていると思ったのだが、実はこのとき限りだったと思われる。終演後、「22日横アリ何が起こった！？」とネットがざわついていたのを記憶している。

改めて映像として観ると、浜田の気合いの入りようが尋常ではなかった。何度も観て、聴いている曲だが、別格だった。22人のバンドも、見事に呼応し機能していた。ステージにいる全員が、持ちうる力を放出し結集させていた。『J.Boy』という曲は、単なるキャッチーな曲としてだけでなく、こういうときのために生み出された曲ではないかと思えた。

ディスク3は、アンコールおよび特典映像だ。メンバー紹介をしつつ、舞台をアリーナ中央部のセンターステージに移してのパフォーマンスだ。恒例のウェーヴや客の年齢層チェックも、しっかり収録。ライヴ映像の前作『My First Love』のときのセンターステージの映像も、時折挿入されていた。

特典映像は、リハーサル風景や日替わりで演奏された曲などで構成。中でも、注目コンテンツは「“On The Road” Time Machine – Special Edition」だ。これは、本編とアンコールの間に流れる映像で、1年前に浜田が国内外で撮影し、映像を流す公演の日にちを語るのだが、ツアー全公演分を立て続けに流すのだ。仙台公演は2012年に延期になっていて、もともと収録した映像を流しつつ、新たに撮り直した映像を重ねていた。映像メッセージは以前のツアーでもやっていることだが、前回とは異なる、そして前回を超えるものを提供しようという、浜田とスタッフの気合いが伺える。

DVDは、合計4時間13分の大作だ。そして、DVDとCDでは、収録曲が微妙に異なる。ワタシが観に行った横浜公演では、『路地裏の少年』は落ちていた。ツアーは基本となるセットリストがありつつ、日替わりで数曲を変えているので、そのすべてを網羅しようとするための構成だと思う。