鬼滅の刃 無限列車編

無限列車で多数の乗客が行方不明になる事件が発生し、「炎柱」こと煉獄杏寿郎が列車に乗り込む。炭治郎・善逸・伊之助も合流するが、「下弦の壱」魘夢の血気術で眠らされてしまう。4人はそれぞれに幸せな夢を見ていたが、魘夢の指示を受けた少年少女たちは、縄でつなぐことにより夢の中に侵入し、「精神の核」を壊そうとしていた。

鬼に殺されたはずの母や弟、妹に再会した炭治郎は、幸福感に浸りつつも違和感を感じる。やがてこれが夢であることに気づき、自分の首を切って夢から覚める。魘夢は無限列車と融合しており、200人の乗客が人質に取られてしまう。炭治郎は伊之助と共に魘夢と戦い、煉獄・善逸・禰豆子は車内の乗客を守るため鬼と戦う。

2020年秋に劇場公開され、日本国内の興行収入記録を更新し400億にまで到達した、『無限列車編』。海外公開分も含めると、500億に達したとも言われている。個人的には劇場で観ることなく、テレビ放送にてはじめて観た（10月からテレビ版としても放送）。

『無限列車編』は、兎にも角にも煉獄に尽きる。柱合会議の序盤では炭治郎と禰豆子に好意的ではなかったが、2人を認める判定が下った後にはそれを受け入れる。夢の中ではあったが、圧倒的な力で鬼を倒し、炭治郎たちから慕われる。現実世界でも炭治郎に的確に指示を出し、自身はとてもひとりでは守り切れないはずの多くの乗客を救った。

それにしても、と思うのは、ストーリー展開だ。魘夢を倒し一件落着かと思いきや、「上弦の参」猗窩座が登場。炭治郎は負傷して動けず、煉獄との一騎討ちになる。序盤こそ互角に渡り合うが、徐々に猗窩座の攻勢が勝ってしまう。煉獄は胸板を貫かれる致命傷を負ってしまい、それでも猗窩座の首に日輪刀をたてて切ろうとする。日の出を目前にして猗窩座は自ら両腕を切って逃亡するが、もしあと数分持ちこたえていたら、もし無限列車の攻防がなく、疲弊がない状態で煉獄が戦っていたら、とも思ってしまう。

煉獄のキャラは激情型と思っていたが、特に終盤ではソフトな語り口になり、これがまた魅力的だ。負傷した炭治郎には全集中の呼吸での止血方法を授け、猗窩座との戦いの後に語ったことばは、そのすべてが重い。禰豆子を鬼殺隊の一員と認め、柱が盾になるのは当然と言い、今度は君たちが柱になるのだと、炭治郎たちに生きる指針を与えた。

炭治郎の直系の兄弟子は富岡になるが、無口な富岡とは異なり、兄貴分肌でわかりやすい性格の煉獄は、炭治郎のみならず伊之助や善逸にも大きな影響を与えた。煉獄を演じる声優は、日野聡。サバサバとした歯切れのいい話し方は、煉獄のキャラクターを見事に体現していた。