松本隆原作・音楽・監督の映画『微熱少年』を観た
先日「風街オデッセイ2021」に行ってきたが、その際に松本隆が監督した『微熱少年』という映画があることを知った。未DVD化で現在入手困難状態だが、TSUTAYAでVHSを取り扱っていることを知り、レンタルした。
高校で同級生とバンドを組んでいる健は、プロ志望のミュージシャン吉田と知り合う。自身は音楽には正直でありたいと思う健は、吉田の元の彼女の優子、電話リクエストのアルバイトを通じて知り合ったエリーの、ふたりの女性との微妙な距離感の中で揺れ動く。
多くの出演者の演技や台詞まわしは棒もいいところで、そこは割り切って観た。1987年公開で、よくも悪くも80年代のふわっとした空気感がにじみ出ている。しかし、劇中の時間軸は1960年代だ。吉田がカヴァーしていたのも、健が電リクのバイトをしたのも、ビーチ・ボーイズ絡みだった。やがてビートルズ来日が決まったことで、それは決定づけられる。
松本隆が執筆した小説を、もとにしている。健がドラマーであることや時代背景から、松本自身の自叙伝的な物語と思われる。麻布に実家があって自室の窓から東京タワーが見えたり、同級生とオープンカーを乗り回したりと、多くの高校生の感覚とはかけ離れているが、あながち誇張とも言い切れず、実際松本はこのような少年時代を過ごしていたのかもしれない。
健は斉藤由貴の実弟の斎藤隆治、エリーは西山由美、優子は広田恵子で、ふたりともカネボウのキャンペーンガールとのこと。当時ほぼ新人の、この3人を売り出すための映画のようにも思える。
実は、この映画には別の楽しみ方がある。数多くのアーティストが出演していて、メインキャストのひとり吉田は、公開時C-C-B脱退直後の関口誠人。健の友人でバンド仲間の浅井は、アップビートの広石武彦。健の母が、森山良子。エリーをスカウトした、カメラマンが吉田拓郎、広告代理店プロデューサーが財津和夫。健の夢に出てくる電車の車掌が、細野晴臣だった。
このほかエキストラ的な出演として、健とエリーが乗るクルマに絡んでくる暴走族リーダーが、Johnny(横浜銀蝿)。プロデビューした吉田のバンドが、ザ東南西北。学食でボブ・ディラン『時代は変わる』を歌っていたのが、爆風スランプ。健が演奏したクリスマスパーティーには、米米CLUBがいた。
エンドロールに、バービーボーイズの杏子とKONTA (クレジットは近藤あつし)の名前があって、巻き戻して確認した。杏子は、電リクアルバイトの場に一瞬だけ出ていた(ここには岸谷五郎もいた)。KONTAは、恐らくだが終盤で健と浅井が会話していた店のバーテンだったと思う(画質が荒く、また画面右端だったので自信なし)。
サントラも充実。主題歌がレベッカ『Monotone Boy』で、ほか鈴木茂、大瀧詠一、細野、松田聖子、南佳孝と、松本人脈が結集されている。
「風街オデッセイ2021」では、杉真理は劇中歌『Do You Feel Me』を歌い、鈴木茂は同名曲を歌っていた。初日に出演した鈴木瑛美子は広田恵子の娘で、松本自身この映画以降広田と交流がなく、広田が結婚したことも、娘がシンガーになっていたことも、はじめて知ったそうだ。
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