レミニセンス(ネタバレあり)
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最終更新日:2024/08/06
サスペンス クリストファー・ノーラン, ディストピア, ヒュー・ジャックマン
近未来のマイアミは、戦争と海面上昇によって街の一部が水没。退役軍人のニックは、戦時中の尋問装置を転用して客に記憶の追体験を売るビジネスをおこなっていた。利用者は一般顧客のほか、警察や検察の捜査に協力することもある。
あるとき、メイという若い女性が部屋の鍵をなくしたと訪れ、ニックは装置を使って鍵を探し出すが、その後彼女と恋愛関係になる。しかし、ある日突然メイは姿を消し、ニックは2人で過ごした記憶に何度も浸る。やがて、彼女がかつてニューオーリンズでマフィアの女だったことや、麻薬を持ってマフィアから姿を消したことなどを知り、彼女の消息を確かめるために奔走する。
タイトルの「レミニセンス」は、公式サイトによると「記憶に潜入すること」を指している。心理学用語では、「学習した直後よりもしばらく後の方がよりより明確に想起できる能力」とのことだ。
高性能機器による記憶の追体験は、『トータル・リコール』を少し思わせる。記憶に潜入するプロットは、もろに『インセプション』を思い起こさせる。謎めいた女の登場は『記憶探偵と鍵のかかった少女』にも通ずるサスペンスだが、本作が少し異なるのはラヴロマンスの要素を強くしている点にある。
メイを想うあまりニックが装置を何度も私用で使うのは、公私混同も甚だしい。また、サスペンスを基調としながらも中盤には銃撃戦があり、終盤には肉弾戦もあって、面食らう部分もちらほらある。がしかし、ニックが真実を知るとき、「すべてが仕組まれていた」ことが判明したのは想定できたが、その後に真実が見えてきて、ある意味時間軸を超えたつながりを迎える瞬間は感動的だ。
ニックは、ヒュー・ジャックマン。ゴツい肉体は精密機器を操る役どころには不似合いだが、元軍人というキャラ設定には生きている。メイはレベッカ・ファーガソンで、ニックの前に姿を見せたときはクラブのシンガーだったが、歌は自ら歌っていたことをエンドロールで確認した。クリストファー・ノーランの実弟でノーラン作品の多くで脚本を手掛けているジョナサン・ノーランが、製作に携わっている。
マイアミロケもされたようだが、ロケハンはともかく、撮影もされたのだろうか。海面上昇により、街中が水浸しになっているさまはCGだし。交通機関は、クルマや電車もあったが、水上タクシーが有効な交通手段になっている。こういう未来もあるのかも、と思わせてくれる。
ラストでニックがメイに語ったオルフェウスの話、ふふっ。
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