『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』をIMAXで観た
近未来。技術の発展によって、人間の脳から直接ネットワークに接続できる電脳化、および人体の義体化(サイボーグ化)が進む一方、犯罪もサイバー化が進むようになっていた。公安9課「攻殻機動隊」は、不特定多数の人間の電脳に侵入するハッカー「人形使い」を捜査するが、逮捕した人物はいずれも人形使いにゴーストハックされ、偽の記憶を植え付けられるなどで操られていただけだった。
政府御用達の義体メーカー「メガテク・ボディ社」のラインが、突如作動して義体を製造。やがてその義体は逃走し、交通事故にあって9課に運び込まれる。公安6課が訪れて引き渡しを迫る中、その義体がしゃべりはじめる。義体は人形使いで、自身が情報の海の中で生まれた生命体であることを主張し、政治的亡命を要求する。
1995年に劇場公開された『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の、4Kリマスター/imax版になる。正直言って映像面での向上はさほど見られず、鮮明になったとは言い難い。もとが古すぎると、IMAXをもってしてもリマスタリングには限界があるのかと思わされる。音の方はクリアになり圧が凄まじく、こちらには効果が感じられた。総合的に考えると、劇場の大きなスクリーンで観るのは、やはり圧巻だ。
直前に士郎正宗の原作を読み返していたこともあり、この押井版は原作にかなり忠実に作られていることを、改めて実感する。その後続編やリブート作がいくつか制作されていて、現在は数種類の攻殻が存在する。が、本作公開時は、原作を映像化したのみという認識が一般的だったのかもしれない。
何度か観ているが、それまでは無国籍風の世界観や未来社会を予見したような世界観の方に関心が行っていた。劇中、アメリカなど外国の国名は会話の中で何度か出てくるが、日本や日本国内の都市名は一切出てこないのを、再認識した。その上で、今回は主人公の素子により注目した。オープニングの直後、素子が全身を電脳化・義体化されて「誕生」する映像が描かれ、それは素子が見ていた夢だった。中盤で、彼女は自分によく似た女性を見かけていた。人形使いの義体を見る彼女の表情は、とても意味ありげだった。素子は自身のアイデンティティを問い続けていて、人形使いはそんな彼女を感知していたのだと思う。
ハリウッド実写版は、数種類の攻殻にオマージュを捧げ、「まんま」とも受け取れるシーンがあちこちに見受けられる。が、その最たるは、やはり最初に映像化された本作になると思う。
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