士郎正宗『攻殻機動隊』
押井守監督の『GHOST IN THE SHELL』『イノセンス』、神山健治監督の『Stand Alone Complex (S.A.C.)』を先に観ていたが、その後で士郎正宗の原作コミック『攻殻機動隊』を読んだ。
全3巻になり、1巻は公安9課結成から人形使い事件まで、2巻はほとんど素子のみ、2002年に刊行された1.5巻は1巻と2巻の間の9課が、それぞれ描かれている。
ほかのマンガを思い起こしたときに、『攻殻』にはいくつかの独特な特徴がある。人物にしろ背景にしろメカにしろ、線が細い。特に1巻では、手書き感が強い。また、コマの外の注記がとても多い。これには士郎本人もツッコミを入れていて、マンガと注記を並行して読むのは難しく、注記は改めて読んだ方がいいのでは、と言っている。
アニメではほぼシリアス一辺倒の各キャラクターも、原作ではフランクな面を見せ、ギャグの要素も結構ある。主人公素子の恋愛模様も、かなり大胆に描かれている。対照的に、バトーの心理面については、アニメの方がより細かく描写されている。
押井版も神山版も、原作を大きく改変しオリジナリティーを出しているものと、読むまでは思っていた。どちらの版も、もちろん独自の要素はあるが、原作を忠実に反映している箇所も多い。そして、2つの版の原作からの反映は見事に被らず、棲み分けがされている。押井版では、ゴミ収集車のくだりを経て人形使い事件を中軸に据えている。神山版は、フチコマをタチコマとして登場させている。
ビジュアルのクオリティは、アニメの方が数段上を行っている。これは、制作用ツールの進化および向上、制作人数の規模なども関係していて、ある意味当然だ。
がしかし、電脳化、義体化に代表されるハイテク技術と、それらを裏付けるSF考証は、ほとんどが1989年から1990年に執筆されたことを思えば、素晴らしいの一語に尽きる。ハリウッド映画や海外の小説で表現されていたSFに並び、いや先んじている点もある。『マトリックス』シリーズの監督は攻殻からの影響を公言しているし、1990年代のSF映画『JM』で、頸椎にプラグを差すさまなどはまんまだ。
『攻殻』のアニメは、リブートにより現在も継続している。そして、それらのすべては士郎正宗の原作から始まったのだ。
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