キッズ・アー・オールライト ディレクターズ・カット完全版
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The Who ザ・フー, ピート・タウンゼント, リンゴ・スター, ロジャー・ダルトリー
ザ・フーのドキュメンタリー映像『キッズ・アー・オールライト』の完全版DVDを観た。ワタシはもともとVHSで持っていて観ていたのだが、2008年の来日を機にDVDを買い直したのだ。この完全版は2枚組になっていて、ディスク1が本編、ディスク2がDVD化に際して新たに出たボーナス映像になっている。
まずは本編。テレビ出演して演奏後に機材を破壊するところから始まり、演奏シーンとインタビューとを混合した、非常に密度の濃い内容になっている。ライヴはウッドストックやワイト島フェス、ロックン・ロール・サーカスなど、単体で発売されている作品からの引用もあれば、初期のモノクロ映像や『Happy Jack』のPV、『Who Are You』のスタジオレコーディングの形を取ったものもある。
インタビューもいくつかのスタイルがあって、テレビの番組でスタジオにて4人が座り、インタビュアーも隣に座ってという形や、リンゴ・スターとキース・ムーンのマンツーマンなどがある(ザックがドラマーとしてフーに帯同しているのを思い浮かべると、奇妙な縁だなと思う)。バンド結成のいきさつや4人のキャラクターの紹介など、ベースとなるところももちろん押さえている。
そしてディスク2だが、監督のインタビュー、制作者によるリマスター処理の過程の解説、ロジャー・ダルトリーのインタビューなど、メニューが数多くある。ロジャーが自分の声が自分では好きではないと語ったのは興味深かったし、他の3人に対するコメントも冷静かつ的確だった。リマスター前と後の音を交互に流したり、リマスター前の映像を左半分、後の映像を右半分にしたりと、マスターからの格段の質の向上が伺える。
また、フーに関する21問のクイズが2セットあって、それぞれ全問正解すると最後にボーナス映像を拝むことができる。このDVDのリリースは2004年だが、2年前に亡くなったジョン・エントウィッスル追悼の意味合いも込められているように見える。『Baba O'Riley』『Won't Get Fooled Again』の2曲について、マルチアングルで4人それぞれのパフォーマンスが見られるほか、ジョンのベース音だけが流されるという非常にユニークな趣向も用意されている。
本編終盤の『Won't Get Fooled Again』は、この映像のためにファンクラブ会員を集めて収録した渾身のパフォーマンスである。特にピート・タウンゼントの気合いの入りようが凄まじく、演奏終了直後はキース・ムーンに抱きついていて、また数人の客がステージに上がってメンバーに抱きついている。制作の頃バンドはライヴ活動休止を宣言していて、実は煮詰まっていた時期だったのではないだろうか。それを吹っ切ってまだやれるという手ごたえを掴んだのがこのパフォーマンスであり、それだけにキースの死が悔やまれたと思われる。しかしこの映像の価値は永遠不滅だし、2人になったとはいえフーは現在も断続的に活動中なのだ。
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