ロマンアルバム・エクストラ 63 装甲騎兵ボトムズ
1983年から1年間放送されたアニメ『装甲騎兵ボトムズ』。放送終了後に徳間書店からムック本が出版されていて、ワタシは88年か89年に購入していた。
全52話を、巻頭カラーで紹介。『ボトムズ』は大きく4つのパートに分かれているが、各パートの最終話をはじめ重要なエピソードのときにはページを割いていた。モノクロになると、主要キャラクターの設定資料を掲載し、初稿のイメージが最終稿から離れているキャラもあった。声優のコメントも併載。フィアナを演じた弥永和子は2014年に亡くなっていて、時の流れを感じずにいられない。
録音監督によると、主人公キリコはオーディションで声優ほぼ初挑戦に近い郷田ほづみを選ぶと、脇をベテランで固めることにしたそうだ。ゴウトの富田耕生、バニラの千葉繁、ロッチナの銀河万丈と、確かに脇は豪華だ。川浪葉子が演じたココナは、クメン編ではバーの歌姫でもあったが、歌入れのときはほんとうに酒を飲んでから臨んだそうだ。
『ボトムズ』にはカッコよさがいくつも散りばめられているが、そのひとつが次回予告のナレーションだ。名ゼリフ満載で、もちろんこの書の中にもすべて掲載されている。担当した銀河万丈は、吹き替えをこなしながら自身も楽しんでいたようだ。
制作スタッフのコメントも興味深い。『ボトムズ』は『太陽の牙ダグラム』の後番組として始まったが、スタッフの何人かは両作品を掛け持ちしていて、プロデューサーは『ダグラム』に打ち込んでいるところを声がけするのが心苦しかったそうだ。劇場版『イデオン』に携わったスタッフも、結構見受けられた。
『ウド』編は『ブレードランナー』を、『クメン』編は『地獄の黙示録』を、それぞれオマージュしている。演出家のひとりと作画監督のひとりがまさにそのことをコメントしていて、裏が取れた気分になった。『サンサ』編の宇宙船内は、『エイリアン』へのオマージュも入っていたとのことだ。
個人的に、『エイリアン』こそ『ボトムズ』よりも前に観ていたが、ほか2作は『ボトムズ』の後に観たと思う。80年代前半というと、まだレンタルビデオや家庭用ビデオデッキが普及する前で、映画を観るには映画館かテレビ放送かしか選択肢がなかった時代だ。また、最近になって気づいたのだが、『サンサ』編のイプシロンの最期は、レプリカントのバッティの最期へのオマージュが入っていたのではないだろうか。
テレビ版終了まもない頃、制作スタッフはこの作品にどこまでの手応えを感じていただろうか。恐らく、この後OVAが断続的に制作され、それがニッチなファンを生み、息の長い作品になることを、この時点で予測できた人はいなかったのではないだろうか。そして35年以上経った今、彼らはきっと、この作品に携わったことを誇りに思っているはずだ。
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