装甲騎兵ボトムズ クメン

1983年から1年間放送された、『装甲騎兵ボトムズ』。放送終了後もOVAが多数制作される、熱狂的なファンを持つリアルロボットもの作品だ。テレビシリーズは全52話で、4つのフェーズから成り立っている。フェーズ毎に総集編としてOVAが制作されていて、『ウド』編に次ぐ『クメン』編を観た。

クメン王国の内乱にて、王国軍の傭兵に加わったキリコ。キデーラ、ポル・ポタリア、ル・シャッコと共にAT部隊として任務を遂行する。ゴウトらとも再会し、バニラはヘリパイロットに志願して内乱に身を投じる。秘密結社のボローは、パーフェクト・ソルジャーを引き連れて反乱軍に加勢していた。

テレビシリーズを知らずに観ていれば、違和感を感じることはないかもしれない。しかし、知っていて観れば、なぜこのような編集になってしまうのかと不満が出るのは間違いない。キリコに次ぐメインキャラクターのフィアナが、全く登場しないのだ（もちろん、エンドロールにも名前がない）。えっ！？まじで！？なんで！？となってしまった。

キリコがイプシロンとはじめて対戦するのもこのフェーズでだが、対戦は1度にとどまっている（厳密にはOVA『ザ・ラスト・レッドショルダー』で対戦しているが、キリコは戦う相手がイプシロンと認識していなかった）。ゴウトとバニラとは直接再会しているが、ココナとのそれはない。ココナは、無線経由でキリコの生存を知っただった。

クメン王国の内乱についても、わかりにくい（テレビシリーズでもわかりにくかった）。反乱軍のトップに近いのが王室のカンジェルマン殿下で、本来王国側にいるべき人物だ。しかし、王国の急激な近代化に反発して内乱を起こし、その行動を裏切りと感じたポタリアは打倒カンジェルマンを志す。

とまあ、いろいろ違和感を感じる中、この編集はキリコにのみスポットを当てたと考えるべきと思った。ウドの街とは大きく舞台が変わり、傭兵として戦いの中でのみ生きる自身を改めて確認。それでも、無駄な戦闘を回避しようとし、仲間との絆を大事にするなど、レッドショルダー時代からはかなり人間くさくなっている。ル・シャッコがここで仲間のひとりとして出ているのは、後々大きな意味を持ってくる。

小型船で川を進む冒頭のシーンは、映画『地獄の黙示録』を彷彿とさせる。確か、制作側も認めていたと思う。オープニングとエンディングが、アニメではなくプラモデルによるジオラマになっていたのは、『ウド』編と同様だ。