ダニエル・キイス『ビリー・ミリガンと23の棺』
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最終更新日:2021/06/21
ダニエル・キイス
連続強盗強姦事件の容疑者として逮捕されたビリー・ミリガンは、多重人格障害と診断されたがゆえに無罪となった。ノンフィクション『24人のビリー・ミリガン』はここまでを描いている。しかし、果たしてビリーはこの後どうなったのか。それを描いたのが、『ビリー・ミリガンと23の棺』だ。
ビリーは無罪にはなったものの、それは刑務所行きを免れただけだった。劣悪とされる州の精神病院に収容され、虐待される日々が続くことになる。ビリーが無罪になったのが面白くない警察や、犯罪者を野放しにするのかという世論を受けて処置をする行政などにより、ビリーは治療どころではなく、人格は分裂と統合を繰り返す。周囲の反対を押し切って結婚した女性には逃げられ、劣悪な病院をたらい回しにされる状況に耐えかねて脱走するも、結局逮捕されてしまう。
社会に絶望したビリーが選んだ手段は、絶食による自殺だった。無謀とも思えるこの行為が、しかし、結果的にではあるが分裂なき人格統合が実現した。人格が安定したとして、ビリーは1991年に解放される。治療が始まったのが1978年で、有罪で服役していた方が、もしかしたら早く社会復帰できたかもしれない。ビリーは現在、名前を変えて生活しているそうだ。
衝撃度は、はっきり言って前作の方が勝る。ひとりの人間に24の人格があり、時と場合に応じて人格が入れ替わる。幼少時の、実父の自殺未遂や養父による虐待により、次々に人格が分裂していった。フィクションでしょと言いたくなるようなことが、描かれていた。
しかし、これが実話である以上、ビリーのその後についても描かれるべきだった。劇中登場する「作家」は、作者のダニエル・キイスその人だ。今回は実名も登場させ、ビリーと対話する機会も増えている。終盤では、ビリーと共に最初に養父に虐待を受けた場所を訪れていて、その場でビリーが過去を許すと語るところは、それまでの荒れた展開を思えば、とても感動的だ。
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