アメリカン・ユートピア(ネタバレ注意)
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最終更新日:2021/06/03
Talking Heads/David Byrne デヴィッド・バーン, トーキング・ヘッズ
デヴィッド・バーンのライヴをスパイク・リーが監督を担った映画、『アメリカン・ユートピア』。タイトルは、2018年にバーンが発表したアルバム名になる。
客席側を除く三方が簾で覆われたステージには、機材も何もない。バーンひとりでの『Here』でスタートし、曲中で男女のダンサーが登場。以降、徐々にメンバーが増え始め、『I Zimbra』で勢揃い。前述の男女ダンサー、ベース、ギター、キーボード、そしてドラムやパーカッションのリズム隊が6人、総勢11人だ。
全員がグレーのスーツを着ていて、ヘッドマイクで歌う。マーチングバンドのように統制がとれ、とても美しい。カメラアングルは、正面だけでなくステージ後方や真上からにもなり、メンバーの配置が計算されたものであることがわかる。ケーブル類を一切使っていないことは、バーンのMCでも触れられていた。それでいて機材トラブルもなく、かつメンバーの動きにも無駄がないのだから、いったいどれだけのリハーサルを重ねたのだろう。
メディアからは、生演奏ではなく録音を流しているのでは?という問合せを、何度も受けているそうだ。そこでと、バーンはメンバー紹介も兼ねてひとりずつ演奏させる。全員による演奏になったとき、『Born Under Punches (The Heat Goes On)』の体を成す。メンバーの出身地は多種多様で、人種や性別を超えた混合編成だ。バーンにとってはトーキング・ヘッズからやっていることだが、未だにこの編成に取り組むアーティストは少ない。
後半には、政治的なメッセージも発せられる。大統領選の投票率の低さを挙げて、会場内でも投票ができることを呼びかける。ジャネール・モネイの曲『Hell You Talmbout』を歌い、映像には亡くなった黒人の写真と名前が映し出される。去年は全米でBLM運動が起こったが、もしかすると時間軸的にこのライヴは先んじていたかもしれない。
ラストは『Road to Nowhere』で、終盤になるとバーンを先頭にして、バンドは一列になって客席の通路を練り歩く。バーンが歌いながら脇を通り過ぎるときの、観客の溢れんばかりの笑顔が眩しく、観ていて羨ましい(笑)。そして、映像はエンドロールでも飽きさせない。バックステージのメンバーを追い、やがて会場から出てくるバーンたちを捉える。バーンは自転車好きだそうで、ニューヨークの街中を疾走するさまは痛快だ。相当のキャリアを持つ人にもかかわらず、一般に近い目線を持っていてくれることが、たまらなく嬉しい。
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