ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)『撮られっぱなし天国』
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最終更新日:2021/05/05
Beastie Boys ベン・スティラー
ビースティ・ボーイズが、2004年10月9日に彼らの地元ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で敢行したライヴ映像を観た(原題は『Awesome: I Fuckin' Shot That!』)。しかしこの映像、ドキュメンタリーを交えているだけでなく、前代未聞の試みがなされている。
それは、選ばれたファン50人にビデオカメラが渡し、公演を撮影させたのだ。もちろんオフィシャルな映像が軸になっているが、スタンディングのフロアやスタンド席など、さまざまなアングルから撮影された映像が組み込まれている。公演開始前、スタッフがカメラを配布する際にした指示はひとつ。「とにかく撮り続けろ」。
ライヴはミックス・マスター・マイクのDJプレイで始まり、やがてマイクD、アドロック、MCAの3人がステージに登場。場内のヴォルテージは一気に上昇し、ファンが撮影した映像がランダムに、カラーやモノクロで組み込まれる。手ブレがひどく、気をつけないと観ていて酔ってしまいそうになる。また、必ずしもステージを映しているわけでもなく、踊っている隣のファンだったり、自撮りだったりすることもある。そして、これらすべてが、ライヴの熱狂ぶりを反映している。
時期的にはアルバム『To the 5 Boroughs』リリースに伴うツアーになり、この約2か月前にはサマーソニックで来日。翌2005年1月には、単独来日公演をおこなっている。MSGは約2万人のキャパシティと聞いているが、日本の会場だとさいたまスーパーアリーナに近いイメージだ。ほとんどのライヴ映像は当然ながらステージを中心に映すが、この映像では、客席や天井からの俯瞰のアングルも頻繁にあって会場の全体像をイメージしやすくなっている。
アンコールでは、3人はスタンド席に乱入して『Ch-Check It Out』を。安全のためセキュリティがメンバーを取り囲む中ではあるが、それでもファンにタッチしたり歌わせたりしている。アリーナクラスのMSGで、この光景はすごい。この後3人がロビーを走ってステージに戻るところも、オフィシャルカメラはフォローしている。オーラスは、バンドモードでの『Sabotage』だ(中盤にもバンドセットがあった)。
終演後、エンドロールが流れる中で楽屋のメンバーたちの様子が流れ、そして客へのインタビューへと切り替わる。その中に、ベン・スティラーのコメントもあった(ライヴ中、ステージからランDMCのダリル・マクダニエルズが名指しされていた)。この映像の監督は、ナサニエル・ホーンブロウワーという人。実は、MCAことアダム・ヤウクの別名義だ。
開演前にスタッフがビデオカメラを配布する際、「20年後にこの映像を観たら、オレたち撮ったんだぜー、ってなるだろ!?」と言い、ファンたちのテンションがあがった。20年経たなくたって、その通りになってるじゃん。
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