プリンス(Prince)『Purple Rain(Deluxe Edition)』
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最終更新日:2023/02/12
CD エリック・クラプトン, ブルース・スプリングスティーン, プリンス
プリンスのアルバムが断続的に豪華盤としてリリースされているが、そのトップを切ったのが、代表作『Purple Rain』だ。妥当な選択だと思う。ワタシが所有しているのは、CD3枚プラスDVDという構成のデラックスエディションだ。
まず、本作の目玉はディスク2だ。ダンスチューンの未発表曲満載で、今クラブでかかっても違和感はないと思う。『Computer Blue』のリミックスは、12分に拡大されたバージョンだ。そして、90年リリースの『Grafiti Bridge』に収録されている『We Can Funk』のデモバージョンが、10分オーバーで収録されている。多作かつ未発表曲満載のプリンスの場合珍しいことではないが、アルバムのイメージや他の曲との兼ね合いから、持ち越されたのだろう。ラストが、『Father's Song』。映画『パープル・レイン』の中でプリンス演じるキッドの父がピアノ弾き語りで聴かせていた曲だと思う。ピアニストだったプリンスの実父が書いた曲線をプリンスがレコーディングし、更に『Computer Blue』にも組み込んでいる。
ディスク3は、シングルバージョンとそのカップリング集。『God』『Another Lonely Christmas』と、アルバム収録曲に少しも劣らないクオリティの曲が並ぶ。それまではベスト盤くらいでしか聴けなかった曲だが、個人的にはこの時期のシングルを入手していたので、懐かしさを抱きながら聴いた。
DVDは、85年ニューヨーク州シラキュース公演のライヴ映像だ。当時VHSソフトとして単品リリースされたのをDVDに載せただけで、特典映像も特にない。ただ、よく考えてみると、プリンスがザ・レヴォリューションと共に行ったライヴの公式映像はこれしかない。この時期技術的にもヴィジュアル面でもプリンスのバックアップに大きく貢献していた、ウェンディ・メルヴォワンとリサ・コールマンをダブルで見られるのは、PVを別とすれば、現状ではこの映像だけということになる。
ブックレットも貴重だ。レコーディングエンジニアのコメントによると、プリンスはバンドメンバーのキーボーディストに片手が遊んでいることを指摘し、ライヴのときはいついかなるときでも両手が遊ぶことがあってはならないと言ったそうだ。また、プリンスの場合、アルバムに収録される曲よりもされない曲の方が多く、大半は最終リハーサルで決まったそうだ。
アルバム全9曲についての、ザ・レヴォリューションのメンバーによるコメントが、興味深かった。大半はプリンスがあらかじめデモ録音しておいたのをメンバーが聴き、プリンスの要求に応える形でレコーディングが進められたようだ。リサのコメントは冷静で理論的、ウェンディは技術面でのコメントは少なく感覚的だったり、当時のエピソードを語ったりすることが多かった。『The Beautiful Ones』では、夜中3時にプリンスのガードマンに呼び出されたが、デモを聴いて感激したとのこと。『Computer Blue』は、リサ、ウェンディ、プリンスの父、そしてプリンスが、コンポーザーに名を連ねている。3人でアイディアを出し合いながら手がけた曲で、そしてプリンスが『Father's Song』の一節を組み込んだ。ほとんどの曲はプリンスが書いている中、いいエピソードだ。
さてディスク1だが、オリジナルアルバムのリマスターだ。冒頭の『Let's Go Crazy』は、このときだけでなく、以降プリンスのライヴで頻繁に演奏されている。『When Doves Cry』はビルボード5週連続1位を記録し、1984年年間1位に輝いた。『Purple Rain』は9分近い大作ながら、こちらもビルボード最高2位を記録。プリンスのパブリックイメージを決定づけた曲になり、死後はエリック・クラプトンやブルース・スプリングスティーンら大御所をはじめ多くのアーティストがこの曲をカヴァーし、この人を追悼した。
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