田中邦衛さん死去
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追悼
俳優の田中邦衛さんが3月24日に亡くなられた。遺族より、4月2日に発表された。死因は老衰で、88歳だった。
改めて確認すると、個人的に観たことのある映画に邦衛さんは結構出演していた。『八つ墓村』『ブルークリスマス』『冬の華』『野生の証明』『居酒屋兆治』『めぞん一刻』『時計』『私をスキーに連れてって』『優駿 ORACION』『さらば愛しのやくざ』『息子』『学校』といったところ。これらの作品では、出番が少ないものもあったが、主人公の親友だったり、主人公のよき相談相手だったりする重要な役どころもこなしていた。
世の中的には、テレビドラマ『北の国から』の黒板五郎役のイメージが強いことだろう。このドラマ、実は重いシーンが結構あって、ワタシはレギュラー放送は観ていない。スペシャルでは、リアルタイムで観たのは『’89 帰郷』『’92 巣立ち』。このときになると、五郎は老け込んでいて、息子の純と娘の蛍に対しては、穏やかに接しているイメージだった。後追いで、『’87 初恋』『’84 夏』を観た。こちらでは、2人の子供に厳しくも優しく接していた。
個人的に最もイメージが強いのが、『仁義なき戦い』シリーズでの槇原役だ。菅原文太や梅宮辰夫、小林旭、松方弘樹、北大路欣也らが演じる男たちが気を張って抗争を繰り広げる中、槇原は何かと理由をつけては逃げ回ってばかりの姑息な役どころで、それでいて死ぬこともなくしぶとく生き残っていた。菅原文太演じる広能には、腰抜け扱いされて相手にされていなかった。金子信雄が演じた山守と並び、正直、観ていて共感しづらい役だった。
『仁義なき戦い』が菅原文太の作品フィールドなら、『北の国から』は邦衛さんのフィールドだった。『’92 巣立ち』では、ストーリー上仕方がなかったとはいえ、邦衛さんが菅原文太演じる役に詫びる場面があった。自分のフィールドでもなお、菅原文太に頭を下げなくてはならないのかと、複雑な思いで観ていた記憶がある。実年齢では、邦衛さんが1歳年上だった。
ここ数年は、俳優の活動をされていなかったようだった。謹んで、ご冥福をお祈りいたします。