ラストデイズ(2005年)
ガス・ヴァン・サント監督作品『ラストデイズ』を観た。
リハビリ施設を抜け出した、ロックアーティストのブレイク。川に入り、森を彷徨い、やがてある邸宅にたどり着く。そこはブレイクの自宅であり、中には取り巻きが居ついていた。自宅には、宗教の勧誘や電話帳広告のセールスマンなどが出入りしては、勝手にしゃべり倒しては帰って行き、取り巻きたちも好き勝手やっている。そして2日後の朝、ショットガンを手に倒れているブレイクの姿が、通りかかった電気技師によって発見された。
既によく知られているが、この作品はニルヴァーナのカート・コバーンの最期を元に想像で描いたフィクションである。そしてガス・ヴァン・サントと言えば、コロンバインの銃撃事件をやはり想像で描いた『エレファント』がまず頭に浮かぶ。平穏な日常。それが何の前触れもなく、突如として非日常の事件へと至ってしまうという独特の空気感は両作品に共通していて、また同じシーンを別の角度から捉え直すというアプローチも、やはり共通している。
序盤はとにかく退屈で、観ていてかなり厳しいものがあるなと思っていたのだが、いつのまにか引き込まれてしまう魔力のようなものを、この作品は持っている。ブレイクはカートのようでもあり、全く違う人物でもありという、かなり微妙で繊細なキャラクターだ。カートは左利きだったのだが、ブレイクはペンを持つ手こそ左だが、ギターの弦を爪弾くのは右手だった。
劇中でヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『Venus In Furs』をレコードでかける場面があり、重苦しい作品のカラーを象徴しているようだった。また、キム・ゴードンがレコード会社の人の役として出演しているのだが、ブレイクに話しかける場面はカートに話しかけているようでもあって、観ていて切なくなった。
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