MW-ムウ-(2009年)
とある島で化学兵器MW(ムウ)が漏れ、住民の大半は死亡し、生き残った者も政府によって処分された。それから16年。生き残った2人の少年は成長し、賀来は神父となって神の教えを説き、結城はふだんはエリート銀行員だが、裏ではMWを奪取し政府への復讐を目論んでいた。
原作は手塚治虫で、社会派の現代劇は手塚にしては異色と言える。映画はいちおう原作に基づいてはいるが、結城と賀来以外はオリジナルのキャラクターが多い。原作そのままを期待してしまえば駄作の烙印を押されて仕方がないが、マンガの自由度の高さと実写で実現できることの限界を思えば、落ち着くところに落ち着いたのかなと思う。
結城を玉木宏、賀来を山田孝之、結城を追いかける刑事を石橋凌、その部下に林泰文、島の事件を追う新聞記者に石田ゆり子、というのが主なキャスト。結城が林演じる刑事を何のためらいもなく殺し(間接的にだが)、石田演じる記者を見殺しにする冷酷さは、原作を思い起こさせる。
この映画が駄作とされている最大の要因は、賀来のキャラ設定が弱いのと、結城と賀来の関係が不明瞭なことにあると思う。神の道を選んだ賀来は、自分および結城が救われることを願い、一方で悪に走る結城を止めようとするも止めることができない。そうなっているのは、原作では2人は同性愛の関係にあるからなのだが、映画ではそれが欠落しており、賀来はただただ結城に振り回される、存在理由が希薄な男になってしまっている。
劇場公開と前後して、2人が同性愛者と思わせる宣材ポスターが発表された。本人たちおよび所属事務所はOKを出したが、スポンサーがNGを出したがために、映画本編では描けなかったのだとか。
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