陽だまりの樹
手塚治虫原作のマンガで、『アドルフに告ぐ』にも劣らない、手塚晩年の傑作である。アニメ版が全25話で制作されていて、2000年の日テレ放送をはじめ、スカパーなどで不定期にリピート放送されている。
江戸時代後期。下級藩士で生真面目な伊武谷万二郎と、医師の息子で女にだらしない手塚良庵は、立場も性格もまるで正反対ながら、奇妙な友情で結ばれていた。藤田東湖は、徳川300年の歴史と興亡を300年間そびえ続け朽ちつつある樹に例え、幕府復興を説く。万二郎は藤田の志に感銘を受け、幕府存続のために奔走。一方、良庵は大坂の緒方洪庵に師事して腕を磨き、やがて江戸に戻って父と共に蘭方医学の普及に努めんとする。
幕末の実際に起こった事件が描かれ、実在の人物が数多く登場する。万二郎は架空の人物だが、良庵は手塚の曾祖父だ。教科書や授業で歴史を学んだ身としては、江戸幕府が倒れたのは当然のように思えるが、その時代を生きた人にとっては、300年続いてきたものがここで終わるはずがない、という想いを抱いていた人も結構いたのかもしれない。
この作品、何度か舞台化もされている。2012年の舞台版では上川隆也が良庵、吉川晃司が万二郎を演じている。90年代にも舞台版があって、そこで良庵を演じた中井貴一が、このアニメ版のナレーションを務めている。
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