ユリイカ 2013年3月臨時増刊号 総特集=世界マンガ大系
文芸雑誌ユリイカで、世界のマンガを取り扱った号を読んだ。
構成は、フランスのバンド・デシネ作家で、『闇の人々』シリーズを手がけたブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンの来日を軸にしている。2人へのインタビューを冒頭に据えたほか、来日時に行われた数回のシンポジウムを収録。大友克洋や浦沢直樹らと対談している。
マンガとバンド・デシネの対比について言及されていて、日本のマンガ家は語り部的、バンド・デシネ作家は美術家的なスタンスとのこと。バンド・デシネではアシスタントを使わず、ほとんどをひとりの作家で描いているそうだ。マンガ評論家夏目房之介が司会を務めたシンポジウムもあった。
記事としては、上記の夏目のほか、日本のマンガを海外に向けて翻訳している人による表現の難しさや日本語やマンガの独特さ、などがあった。「漫画」「マンガ」のことばの使い分けについて言及した評論家が過去に数人いたとのこと。「漫画」は戦前まで、「マンガ」は戦後以降でアニメやCMも含んでいる、という位置づけが、個人的にはしっくりきた。
基本的に読み物系の雑誌ではあるが、この号についてはもう少し図版があってもよかったと思う。また、「世界マンガ大系」というサブタイトルを冠しながら、実質はマンガとバンド・デシネに対する記述がほとんどだった。アメコミについては、ちょこっと触れられているのみだ。巻末にいちおう世界各国のマンガ事情が紹介され、日米仏のほかイタリア、イギリス、香港、韓国、ベトナムについて記載されていた。が、文字だけだとイメージが湧きにくい。
個人的には、アメコミは原作は未読だが、マーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースといった映画を観ていて、それなりに親しみを感じている。バンド・デシネにはとても興味があるが、作品が日本でももっと紹介され、入手しやすくなると嬉しい。
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