「AKIRA」をドルビーシネマで観た
夏にはimax版が公開されていた『AKIRA』だが、12月になって今度はドルビーシネマ版が公開され、観に行ってきた。
1988年7月、突如東京で大爆発が起こり、都市は壊滅状態に。それから31年後の2019年、東京湾にはネオ東京が建設され、廃墟となった街は旧市街と呼ばれていた。暴走族メンバーの鉄雄は、反政府ゲリラによって連れ出された老人顔の少年タカシを避けきれず激突。鉄雄は、タカシと共に軍の研究機関によって確保される。
いったんは研究施設ラボを脱走した鉄雄は、仲間の金田らに対して強気の態度に出る。その後再び確保され、ラボにて覚醒し超能力を発揮。タカシ、マサル、キヨコの実験体「ナンバーズ」によりアキラの存在を知った鉄雄は、接触を試みる。一方金田は、成り行きもあって反政府ゲリラと行動を共にし、鉄雄に接触すべくラボに潜入する。
何度か観ている作品だが、劇場でとなると、それこそ初回公開時の1988年以来になる。当時はアニメファンの間ではそこそこ話題にはなったものの、一般レベルにまでは浸透していなかったと思う。それから32年が経ち、劇中の舞台2019年から1年が経過した後に再び劇場で観ているのは、とても感慨深い。先日国立新美術館に観に行った『MANGA都市TOKYO』も、『AKIRA』を中軸に据えていた。
東京オリンピックを予見していたこと(原作者の大友克洋によれば、前回の東京開催から換算して2020年には開催されるだろうと想定したとか)、ハリウッド実写化の話が何度か出ていること、『レディ・プレイヤー1』に金田のバイクが流用されていることなど、年月を経る毎に影響力は大きくなっていると感じている。国内ばかりか、海外でも人気があり評価が高いことは、日本人として誇らしい。
さて「ドルビーシネマ」だが、まずドルビービジョンによる映像面は、個人的には少し微妙だった。黒がほんとうに黒く見え、コントラストが絶妙なのは実感した。しかし、画像の鮮明さや色彩の鮮やかさについては、感じられなかった。エンドロールのクレジットも、字がにじんでいるように見えた。オリジナルの映像から、リマスター処理はされていないのかもしれないとも思った。
対して、ドルビーアトモスによる音響面での効果は圧倒的だ。オープニングの芸能山城組によるテーマのイントロが流れた瞬間、体がゾクゾクした。バイクの疾走、ヘリコプターの飛行、戦闘衛星SOLに代表される兵器、キャラクターの感情を代弁するかのような効果音など、立体的に発信されていると感じた。ドルビーアトモスはTOHOシネマズでも何度か体験しているが、ここまですごかったかだろうかと思った。あるいは、このシアターが特別な構造になっているのかもしれない。
大友は原作の連載を中断し、アニメ版を制作。その後原作も再開させ、1990年に完結している。ストーリーとしては、原作の方がよりスケールが大きい。また、現在の制作技術を以てすれば、更にクオリティの高い映像が作れるはずだ。実写化の話もあるのでなかなか進められないかもしれないが、リブート版として完全版アニメが制作されたらいいなあ、という妄想を抱いている。
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