嵐が丘(1988年)
エミリー・ブロンテが書いた小説で、何度も映画化され、舞台化もされている作品。吉田喜重監督による、日本映画も公開されている。
「吉田嵐が丘」は、舞台背景を日本の鎌倉時代に置き換えている。人里離れた山で暮らす山部一族。その東の荘の太夫は、あるとき町で素性の知れぬ野卑な男を連れて帰り、鬼丸と名づけて屋敷に住まわせる。太夫には秀丸と絹の2人の子がいて、秀丸は鬼丸を疎ましく思うが、絹は鬼丸のことを気に入っていた。やがて太夫は亡くなり、跡継ぎの秀丸は妻を殺され気がふれてしまう。絹は西の荘の光彦のもとに嫁いで女の子を産む。鬼丸は東の荘の太夫となり、絹を迎え入れようとするが光彦に拒否され、そして絹は難産がもとで病を患い亡くなってしまう。鬼丸は、絹の墓を掘り起こして亡骸を屋敷に持ち帰るなど異常なまでに執着するが、いつしか絹の幻影に振り回される格好となる。
キャストはかなり豪華。鬼丸は松田優作、絹は田中裕子、太夫は三国連太郎、秀丸は萩原流行、光彦は名高達郎。秀丸の息子で後に鬼丸と対決する良丸は古尾谷雅人、絹の娘は高部知子、光彦の妹は石田えり、となっている。終始重苦しい雰囲気が漂う難解な作品だが、登場人物とその相関関係は原作を踏襲しているようだ。本作はカンヌ映画祭に出品され、また石田えりは国内の複数の映画賞で助演女優賞を受賞している。
この作品、ワタシは公開当時劇場で観ていて、その後にテレビでも観ている。劇場までで足を運んだのは、とにかく松田優作目当てで、鬼気迫る演技は翌1989年に公開された「ブラック・レイン」を彷彿とさせる。しかし、テレビで観たときには、鬼気迫り過ぎていて作品の中からは浮いてしまっているように思えた。逆に、静かで淡々と演技する田中裕子が妖しいまでの美しさを放っていたように感じた。現在は芸能界から身を引いている、高部知子の演技も光っていて、吉田監督がほんとうに描きたかったのは、女性たちの方ではなかったのかと思わされる。
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