あばよダチ公(1974年)
刑期を終えて出所した猛夫は仲間の梅、雅、竜とつるむが、キャバレーで無銭飲食してひと騒ぎして留置場に入れられるなど、煮え切らない日々を過ごす。あるとき、竜の親戚のシン子が家出して転がり込み、猛夫たちはシン子の村がダム建設で立ち退きを迫られていることを知る。
立ち退きの保証金をせしめるべく、猛夫はシン子と結婚し婿養子入りする。一行は村に行き、シン子の父から反対運動を引き継ぐ。男4人とシン子という奇妙な共同生活が始まるが、ダム建設の利権を握る建設会社(実態は反社)が梅を拉致し、引き換えに権利書を要求される。
猛夫を松田優作、梅を佐藤蛾次郎、雅を河原崎健三、竜を大門正明、シン子を加藤小夜子。松田優作にとっては、映画初主演になる。1年前のスクリーンデビュー作「狼の紋章」では演技が固かったが、「太陽にほえろ!」を1年間こなしたこともあってか、ここでは完全に役を自分のものにしている。やはり「狼の紋章」に出演していた加藤小夜子は、役柄上松田優作とより親密な関係になり、ヒロイン的存在になっている。
出番はわずかながら、大物が結構出演している。警察署で取り調べする刑事が「太陽にほえろ!」の長さんこと下川辰平、猛夫の母が初井言榮、そして猛夫の姉がなんと樹木希林だった(当時は悠木千帆という芸名)。
上記の通り唐突に猛夫とシン子が結婚してしまったり、キャバレーでの騒ぎは結局お金を払わずじまいで済んでしまったり、と、かなりムチャクチャな展開だ。クライマックスでは、建設会社のプレハブにて保証金をせしめるものの、警察から催涙弾を打ち込まれ、彼らはなんと札束を食べるという暴挙に出る。クレーンでプレハブは破壊されるが、4人はその先にしがみつき、まんまと逃げおおせてしまう。アメリカンニューシネマのように、滅びの美学も絶望感もない。いい意味での裏切りの展開と、猛夫たち4人の自由奔放なさまが、観ていて気持ちよかった。
劇中流れている音楽が、メロトロンやキーボードが多用されていて、とても気になった。調べてみたら、コスモスファクトリーという70年代に活動していた日本のプログレバンドだった。
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