「zk/頭脳警察50 未来への鼓動」を観た
昨年結成50周年を迎えた頭脳警察の、ドキュメンタリー映画を観た。2018年から今年にかけて密着撮影した映像をベースにしつつ、50年を総括した見応えのある内容になっている。
冒頭で『銃をとれ!』のライブがモノクロで流れ、これだけでテンションがあがる。そして戦後の日本の歴史にリンクさせるようにして、pantaと石塚俊明の生い立ちから音楽への目覚め、2人の出会い、頭脳警察結成と続く。さすがに当時の映像は三里塚以外にほとんどなく、写真と当事者たちのコメントで構成される。ファースト発禁、セカンドが発売後1か月で回収、三田祭ではっぴいえんどのステージを乗っ取った事件などは、活字として知り得ていた情報だ。
しかし、解散する1975年12月31日、自主制作でファースト600枚を郵送するも返品が少なくなかったというエピソードは、はじめて知った。今でもPANTAが大切に保管していると言い、倉庫から出されたファーストのジャケットには、目が釘付けになった。
そのほか映像として貴重だったのは、1990年の再結成ライブだ。楽屋で石塚が妙におどけていて、そのノリのままステージに立った。火のついたタバコを客席に投げ、途中からパーカッションを叩くのをやめてセットを壊してしまった。本編終了後2人はもめたそうで、結局アンコールはやらなかったとのこと。石塚がここまで弾けてぶっ飛んでいるのは、はじめて見た。よほど嬉しかったのか、それとも・・・。
2人のソロ活動の様子が組み込まれていたのも、嬉しかった。石塚のシノラマの映像を観たのははじめてだったし、ロシアに併合されたクリミアにPANTAが2018年に行ってライブをおこなったのは、大きなインパクトがあった(しかも、PANTA招聘に動いたのは保守系の政治団体だった)。PANTAは通訳を介して、『7月のムスターファ』を書いたときのことを語った後、歌い始めた。
そして2019年。ギターに澤竜次(黒猫チェルシー)、ベースに宮田岳(黒猫チェルシー)、ドラムに樋口素之助、キーボードにおおくぼけい(アーバンギャルド)を迎えて、50周年バンドとして頭脳警察が始動。4人は90年再結成の前後に生まれた世代だが、PANTAと石塚をリスペクトしつつ、アーティストとして言うべきことは言う姿勢で、それは正しいと思った。おおくぼはプロデュースも担い、PANTAからの信頼の厚さが伺えた。個人的に、新譜『乱破』のレコ発ライブに足を運んでいて、そのときの演奏シーンには観ていてテンションが上がった。
50周年の締めくくりは、今年2月に渋谷La.mamaでおこなわれたライブだ。PANTAと石塚は誕生日が3日しか違わず、2人の誕生日に近い日ということで古希祝いにもなっていた。ステージには、鈴木慶一や高嶋政宏らの顔も見えた。
トークショー、ライブでの共演、またはこの映画のためのコメントで登場したゲストの顔ぶれは豪華だった。加藤登紀子、佐渡山豊、白井良明、ROLLY、うじきつよし、大槻ケンヂなどだ。映像はLa.mamaで終わり・・・かと思いきや、無人の渋谷スクランブル交差点が映し出され、コロナ禍に見舞われている現在と一気にリンク。ここでPANTAが決行したのは、新曲『絶景かな』のライブレコーディングだった。
最後の最後まで、観る側を飽きさせない。それは、頭脳警察が過去の実績にすがるバンドではなく、未来まで続けていく堅い決意を打ち出したバンドであることの現れだ。
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