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タクシー・ドライバー(1976年)

タクシー・ドライバー(1976年)

ニューヨーク。海兵隊を除隊した主人公は、不眠症もあってタクシーのドライバーになる。街中をタクシーで走る中、麻薬や売春などが日常的に行われる状況に幻滅し、内に秘める怒りが徐々にたまっていく。

ある日、たまたま見かけた女性ベッツィーに一目惚れしてアプローチするも失敗。彼女が次期大統領候補者の選挙事務所で働いていたことから、政治家にも疑念を抱くようになる。その一方で裏ルートから拳銃を入手し、自身の肉体を鍛え上げる。そんな中、たまたま知り合った少女アイリスが娼婦であることを知り、彼女を説得する一方でポン引きを激しく憎むようになる。

主人公トラヴィスを、ベッツィーはシビル・シェパードという人。アイリスは、当時13歳だったという。監督はデ・ニーロとは縁が深いで、妻の浮気に怒りを覚えるタクシーの客の役で出演している。アイリスのヒモ男は、デ・ニーロやスコセッシとは盟友の間柄にあるハーヴェイ・カイテルだった。

正直に言って、作品としては語り継がれるほどの凄さは感じなかった。トラヴィスの役どころも、アウトロー風でいながら一般市民の枠を超えるものではないし、終盤大統領候補者の演説会場に現れるも、結局シークレットサービスに目をつけられてしまい、何をするでもなくその場を去っていくだけ。選挙事務所で働くベッツィーとの関係も、果たして必要だったのだろうかと思ってしまう。

見どころは、役に賭けるデ・ニーロの凄まじさの1点に尽きる。この役をこなすために、自ら実際にタクシーのドライバーになったというし、また拳銃のホルダーを袖から吊って鏡を見ながら抜くシ-ンは、名場面として観る側の目に焼きつく。大統領の演説会場に現れたときは、なんとモヒカンヘアになっていた。

そして何より、ここでのデ・ニーロは若くてとんがっている。体型はほっそりしていて、表情も精悍。後の作品では頂点に君臨するボスのような役柄が多い中、ここでのデ・ニーロは頂点に向かって突き進んで行くかのようなエネルギーが溢れているように思うのだ。

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