007 ユア・アイズ・オンリー(1981年)
英国の諜報船セント・ジョージが、何者かの攻撃を受けて沈没させられる。セント・ジョージにはミサイルを誘導できる装置ATACが搭載されていた。英政府の依頼で船を調査していたハブロック博士も、殺されてしまう。
ジェームズ・ボンドは博士殺しの実行犯ゴンザレスのアジトに潜入するも、捕まってしまう。しかし、ゴンザレスとその手下たちは次々にボウガンで殺害され、ボンドは脱出。博士の娘メリナが、父だけでなく母や仲間を殺された復讐を果たしたのだった。ボンドはゴンザレスには雇い主がいたはずだと考え、実業家コロンボから商売敵のクリスタトスが黒幕だと聞かされる。
ロジャー・ムーアがボンド役になってからの007シリーズには、どこかに必ずコミカルな描写があった。しかし本作にはそれが見当たらず、徹底してシリアスだ。その象徴と言っていいのが、ボンドガールのメリナだ。当然美形だが、聡明なキャラクターで、肌の露出も最小限。半ばお約束になっている、ボンドとのキスシーンやベッドシーンもなかった(ラストでは、そうなることを匂わせる描写こそあるものの)。キャロル・ブーケというフランス人が演じていて、後にシャネルのモデルも務めたそうだ。
過去の作品との関連もある。冒頭、ボンドはテレサの墓参りをするが、これは「女王陛下の007」でボンドと結婚するも、スペクターの首領ブロフェルドに殺害されてしまった女性だった(このときのボンド役はジョージ・レーゼンビー)。その後ヘリコプターでロンドンに向かったボンドだが、ヘリを遠隔操作して墜落させようとしたのは、車椅子にスキンヘッドの男。どう見てもブロフェルドだが、劇中では顔も名前も明かされずじまいだった。
主題歌がシーナ・イーストン、決戦の地がギリシャの世界遺産メテオラになっているなど、話題に事欠かない。映像も、一部のハメコミを除けば鑑賞に耐えうるクオリティだ。また、劇中ではボンドの上司Mは休暇中ということになっているが、実のところは俳優のバーナード・リーが撮影前に亡くなったのだそうだ。この人は、Qのデスモンド・キュウェリン、マネーペニーのロイス・マクスウェルと共に、ボンド役が交代しても出続けていた人だった。
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