007 ムーンレイカー(1979年)
アメリカからイギリスに空輸中のスペースシャトル「ムーンレイカー」が、何者かに強奪された。ジェームズ・ボンドは、シャトルをNASAと共同開発した大富豪ドラックスの研究所を訪ねてカリフォルニアに向かい、事件に関係すると思われる設計図を入手。記されているものがイタリア・ベネチアのガラス工房で製造されていると知り、現地に向かう。
ボンドは、工房の中にある研究所で殺人ガスを発見。また、カリフォルニアの研究所で働いていたグッドヘッド博士とも再会し、彼女がCIAのスパイであることを見抜く。研究所内にあった貨物を手掛かりに、2人はブラジル・リオへ。そこで、ドラックスの恐ろしい計画を知る。ドラックスは自らが選んだ優秀な人材のみを宇宙ステーションに退避させ、全人類を殺人ガスで抹殺した後に新たな世界を創り出すことだった。
毎回世界中を飛び回っているボンドだが、今回はあちこち行った挙句、クライマックスの舞台になったのはなんと宇宙だ。ムーンレイカー強奪もその一環だったのだが、ほかにも無数のシャトルが次々に打ち上げられ、わざわざ強奪する必要があったのかなとも思うし、これだけの規模を手がけられるのは最早国家レベル以上で、たかがいち資産家にできるかよというツッコミも入れたくなる。
しかし、宇宙ステーションが見えた瞬間は映像として圧倒的だったし、個人的に嫌いじゃない。こうした描写は、本作の2年前に公開された「スター・ウォーズ」の成功や実世界でのスペースシャトル打ち上げを1981年に控えていたことなど、宇宙志向の気運を反映させたと思われる。ベネチアのガラス工房で研究所のドアの暗証キーが「未知との遭遇」のメロディーになっていたのは、ちょっとした遊び心だ。
ボンドガールのグッドヘッドは、ロイス・チャイルズという人。「華麗なるギャッツビー」「ナイル殺人事件」のオリジナル版にも出演している人とのこと。役のキャラクターは、前作と同様ボンドと対等に渡り合う自立した女性だ。そして、同じく前作「私を愛したスパイ」に登場していた殺し屋ジョーズが、今回も登場。まず冒頭で飛行中のボンドを襲ったほか、事あるごとにボンドの前に立ちふさがる。しかし宇宙ステーションの攻防では、巨漢で強面の自分を恐れず受け入れてくれた女性を守るため、ドラックスを裏切ってボンドと共闘する。
序盤に、ドラックスの部下で殺し屋のチャンという男がボンドをつけ狙う。カリフォルニアの研究所ではベネチアまでボンドをつけ狙い、剣道の防具姿で襲いかかる描写は外国映画にありがちな日本に対する曲解だが、演じていた人が気になって調べてみた。トシロー・スガという人で、英語版ウィキペディアにはこの人のページがあった。東京生まれの合気道師範で、海外で合気道を普及させた人のようだ。
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