ザ・クラッシュ(The Clash)「ルード・ボーイ」
1970年代後半のロンドン。ポルノショップで働いていた青年レイは、やがてロックバンド・クラッシュのローディーとしてツアーに参加する。
欧米では1980年に劇場公開され、日本では1987年にひっそりと公開されたとのこと。フィクションのはずだが、主人公レイの物語はそうだとしても、そのほかの部分においては、ドキュメンタリーではないかと思わされる。
当時のロンドンは、経済が破綻し失業率が上昇。黒人の移民は貧困から犯罪に走ると決めつけられ、当局に監視されつつ、不当に逮捕されていた。サッチャー首相の演説シーンも何度か流れていたが、映像使用にあたり権利関係的に問題はなかったのかなと思ってしまう。
なので、本作は正確にはクラッシュのための映画ではない(クラッシュのメンバーは、公開時に作品の内容に不満を持ったとのこと)。しかし、彼らのシーンはどれも貴重なものばかりだ。時期的にはセカンドアルバム『Give ‘Em Enough Rope(動乱(獣を野に放て))』のレコーディングと、それに前後したツアーに当たる。
ヴィクトリア・パークでの、「ロック・アゲインスト・レイシズム」のライブのシーンは圧巻。ツアーでのライブハウスでの演奏シーンも、臨場感に溢れている。スタジオでミック・ジョーンズが歌入れしたり、ジョー・ストラマーがピアノを弾きながら切々と歌うシーンなども素晴らしい。
タイトルの「ルード・ボーイ」はレイを指し、ジャマイカでの不良少年を意味するスラングを語源とするとのこと。一方、ファッションやライフスタイルのサブカルチャーのジャンルのひとつでもあるらしい。劇中にはクラッシュの曲が流れまくるが、ラストに流れる『Rudie Can't Fail』(後にアルバム『London Calling』に収録)が象徴的で、そしてなんとももの悲しい。
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