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『男組の時代』を読んだ

公開日: : 最終更新日:2020/03/07 池上遼一

『男組の時代』

かつて、週刊少年サンデーに雁屋哲原作、池上遼一作画の『男組』というマンガが連載されていた。昨年、連載完結40周年という節目に掛けてか、解説本が出版された。

学園支配のみならず、理想社会を作る野望を持った神竜剛次。校長の要請により神竜を止めるべくやってきた、流全次郎。流は、父親殺しの罪状で少年刑務所に服役中だった。2人とその勢力による対決は、やがて戦後の日本政府を裏から操っていた影の総理に行き当たる。影の総理は神竜をバックアップしていたが、神竜の資質を危険視して流ともども抹殺しようとし、三つ巴の抗争になる。

作品を読んでいたとき、描き方や何人かのキャラクターには元ネタがあるなとは思っていた。拳法は戦う手段として随所に描かれるし、堀田英盛は西郷隆盛、高柳秀次郎はブルース・リーを思い起こさせる。しかしこの書では、影の総理のモデル、更には青雲学園の場所にまで仮説を広げている。後半で決戦の舞台になる少年刑務所が、三里塚闘争をモチーフにしているという考察は、その時代を生きた人ならではの感覚だと思った。

ラストについての考察には、結構驚いた。園遊会に忍び込んだ流は、短刀を構えて影の総理に向かって突進する。影の総理の後方には、特務部隊が銃を構えている、という状況を描写して終わっている。これを読んで、流は影の総理を目の前にしつつも倒すことなく射殺されたと、ワタシは長い間思っていた。しかしこの書では、流は影の総理に短刀を突き刺し「処刑」には成功するものの、部隊に射殺されるとしている。

雁屋哲、池上遼一、そして担当編集者だった白井勝也のインタビューも掲載されている。雁屋と池上のコメントには『池上遼一本』と重複する箇所があるが、政治や思想の面において、より踏み込んでいる。池上には、毎回必ずアクションを入れるようにという編集部からの注文があったそうだ。白井は、2人の特長をニュートラルな視点で捉えつつ、当たることを確信したとのこと。

巻末には、登場人物紹介、連載時の年に合わせた劇中の年表、各巻の章一覧も掲載されている。データベースとしての役割も果たしていて、90年代に流行った、謎本や解説本を思い出す。

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