フィッシャー・キング(1991年)
ニューヨーク。過激なトークで人気のDJジャックは、ラジオ番組中にリスナーを煽る発言をし、その相手は銃乱射事件を起こした末に自殺してしまう。ジャックは名声も職も失い、恋人アンのところに転がりこんで3年を過ごしていた。失意のジャックはあるときホームレス狩りの若者たちに襲われるが、ホームレスのパリーに救われる。
パリーは自分が聖杯を探す使命を神から授かっていると言い、ジャックは正気に戻そうとする。しかし、パリーが銃乱射事件の現場にいて、ショックで記憶を失いホームレスになってしまったことを知る。ジャックは、パリーが密かに想っている女性リディアとの仲を取り持とうとする。
ジャックは、ジェフ・ブリッジス。現在は大御所感を漂わせているが、このときは40代前半でまだ若々しく、凛々しく、そしてチャラい役柄をこなす。パリーは、ロビン・ウィリアムズ。時期的に『いまを生きる』『レナードの朝』に主演した後で、この人のキャリアのピークを迎えている頃だと思う。パリーは、もとは大学教授だったが目の前で妻を亡くしホームレスになるという、複雑な役どころだ。
リディアは、アマンダ・プラマーという人。目立たず不器用で、恋愛の経験もない。しかしパリーとの出会いによって、自らを解放していく役柄だ。ジャックの恋人アンはマーセデス・ルールという人で、実はこの人こそいちばんの儲け役に見える。憎まれ口が多いが、結局はジャックの面倒を見続け、またリディアの後押しもする。
監督は、テリー・ギリアム。現実の中に非現実を織り混ぜるのはこの人定番のアプローチで、今回はパリーが幻覚を見るシーンがそれだ。ジャックとパリーの関係性は、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』でのトビーとハビエルとの関係性の先駆けのようにも見える。ショートカットのリディアの見た目は、『未来世紀ブラジル』のジルをちょっと思い出す。アンが経営するレンタルビデオショップには、ポスターが貼ってあった。
テリー・ギリアムにはカルト監督のイメージがあるが、本作はヴェネチア映画祭で銀獅子賞を、ロビン・ウィリアムズはゴールデングローブ賞の主演男優賞を、マーセデス・ルールはアカデミー助演女優賞を受賞している。ギリアムにとっての、代表作のひとつになっている。
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