U2『U2 360 Live At Rose Bowl』
u2が2009年に行ったツアーより、アメリカはサンフランシスコの公演が映像作品としてリリースされている。
会場はローズボールと言って、アメフトチームの本拠地野外スタジアムだ。このツアーでは、ザ・クロール(かぎ爪)と呼ばれる4本のアーチで支えられたドーム状のステージセットになっていて、スタジアムの中央部に設置。よって、通常のステージよりも25パーセント多く集客できる。この公演は9万7千人を動員し、全米コンサート集客の当時歴代トップになったそうだ。
まずはライブ本編のディスク1。『Get On Your Boots』『Magnificent』という、このときの新譜『No Line On The Holizon』からのリード曲でスタート。クロールの上部はスクリーンにもなっていて、ステージの様子を映し出す。全方位型ステージにつき、いちおう正面があることはあるが、ボノ、ジ・エッジ、アダムの3人は定位置に収まることは少なく、常に移動している。
小ネタも多い。『Beautiful Day』のラストにはビーチ・ボーイズの『God Only Knows』が、『I Still Haven't Found What I'm Looking For』のラストには『Stand By Me』が、『Vertifo』ではローリング・ストーンズの『It's Only Rock ‘n' Roll』が、それぞれ組み込まれている。サービスの度合いがハンパない。また、このライブはYoutubeで全世界に生配信されていて、ボノは何度も世界は今何時?と呼び掛けていた。
後半の『Sunday Bloody Sunday』は、社会派にシフト。『MLK』はもともとマーティン・ルーサー・キング牧師を歌った曲だが、ここでは次の『Walk On』とセットでアウン・サン・スーチーに捧げられている。客はスーチーのお面を被り、また数人は花道に登場し、となったが、お面を被った集団はちょっと不気味だった。アンコールを経て、ラストは『Moment Of Surrender』で締めくくられた。
メニュー画面でコントローラーをレバーを無造作に押していると、隠しコンテンツがお目見え。リハーサルやステージ設営の様子を収めた、約11分の映像を観ることができた。
ディスク2は、ツアーの準備を追ったドキュメンタリー、ツアー初日であるバルセロナのカンプ・ノウの様子、各地の模様の抜粋、PV集など。U2はそれまでにもスタジアムクラスの巨大セットでのツアーをしてきたが、21世紀になってからはアリーナツアーを行っていた。ボノは、再びスタジアムに還りつつも、観客との距離を少しでも縮めるセットのことを考えていたと言っていた。ザ・クロールはベルギーで制作され、組み立てるのに4日かかるそうだ。
ジ・エッジが撮影した写真集もあって、なかなか興味深い。かなり枚数があり、移動中の車窓からの風景、ホテルの部屋、詰め寄せたファン、バックステージなど、メンバーの視線を疑似体験できる。
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