U2『From The Sky Down』
さて、u2『Achtung Baby Super Deluxe Edition』のDVDディスク1は、『Achtung Baby』の制作過程を中心にしたドキュメンタリー映画だ。
『Achtung Baby』がリリースされたのは、1991年。しかし映画の冒頭とラストは、2011年グラストンベリーでステージに立つ直前の4人の姿だ。そこから当時の映像と、回想する現在のメンバーとが交互に行き来するという構成になっている。とはいえ1991年前後だけでなく、バンド結成や初期の活動も描いている。
正直に言って、ケチをつけたいところはいくつかある。作風は非常に地味で、気を引き締めないと寝てしまう(笑)。プロデューサーのブライアン・イーノやダニエル・ラノワが、ほとんど出てこないのも不自然だ。ライヴのシーンも少ない。というか、ほとんどない。まるで、ファン度を試されているようだ。
見所は、やはり曲が出来上がってくる過程を映像として垣間見ることができる点だろう。メンバー間のやりとりは時に緊張感も孕むが、それはよりよい音楽を目指すがゆえのぶつかり合いだ。『One』では、ボノが歌詞ではなくギターのコードを口にしていて、これがとても興味深い。
ボノがツアーに際し、自らに課したキャラクター「マックフィスト」。サングラスをかけ、黒ラメの革ジャンをまとい、道化とも傲慢とも受け取られかねないパフォーマンスをする。そのキャラ作りのねたもとは、イギー・ポップ、ルー・リード、エルヴィス・プレスリーなどだそうだ。ここで、はっとさせられた。ツアーで『Sattelite Of Love』を歌いモニターのルーとデュエットを果たしたり、オーラスが『Can't Help Fallin' Love With You』だったりしたのには、こういうウラがあったのだ。
バンドに定着しかけていた「清く正しい」イメージは、ともすれば彼らの音楽性に制限をかけてしまう危険性があり、バンドもそれを恐れていた。『Achtung Baby』、及びZoo TVツアーによって、テクノロジーの大胆な導入を果たし、呪縛から解放されたのだろう。
ワタシが観たDVDは75分だったが、WOWOWで放送されたのは85分あった。早送りしてみると、確かにDVDにはなかったシーンがいくつかある。なんで?と思い調べると、別途単品リリースされているバージョンはディレクターズカット版で、恐らくWOWOWが放送したのはこちらだと思われる。
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