ブレードランナー3 レプリカントの夜
前作のラストで、サラ・タイレルはタイレル本社を爆破し、デッカードと共に地球を脱出。2人は火星に向かい、偽名を使い夫婦を装っていた。しかし2人の間には愛情はなく、特にサラのデッカードに対する憎悪は強くなるばかり。デッカードはサラのコピーだったレイチェルと愛を育み、テンプラント(オリジナル)の自分には愛情をくれない。それは、生活を共にしても変わることはなかった。そんなサラの元に、タイレル社の社員を名乗る2人の男が現れる。
一方、リック・デッカードはリオン・コワルスキーと対峙。しかしこれは、巨大スタジオのアウター・ハリウッドにおける、デッカードの伝記映画撮影のひとコマで、演じているのは俳優だ。本物のデッカードは監修として制作会社に雇われ、現場に立ち会っていた。
映画『ブレードランナー』の約1年後を描いた小説『ブレードランナー2 レプリカントの墓標』の続編で、1997年に邦訳が出版された。作者は、引き続きK・W・ジーターという人だ。2017年に正統な続編の『ブレードランナー2049』が公開されているが、時系列的にはこちらの方が早く世に出ていて、1992年の『ディレクターズ・カット』を受けたその後の世界を描いている。よって『2049』はいったんシャットアウトし、小説の前作とセットで捉えるべきだ。
デイヴ・ホールデンやJ・F・セバスチャンも登場するし、前作で死んだロイ・バッティも、異なるスタイルで再登場する。しかし、本作では彼らの役割はさほど重要ではない。物語はデッカードの動向とサラの動向が交互に描かれ、2人の決着戦の様相を呈している。
読み続けるには、かなりの我慢が必要だ。というのも専ら会話劇が中心で、しかもどのキャラクターの言い回しもまわりくどくてわかりにくく、よって進行が鈍い。いらいらする。設定は、前作も本作も、よく言えば大胆、はっきり言えばお粗末だ。レプリカントと人間とのボーダーラインをあいまいにすることを狙っているのだろうが、説得力に欠ける。
しかしだ。以下は結末の一部のネタバレになるが、大胆な設定ながらこういう方向性はアリ、というところに物語は着地する。宇宙ではレプリカントが進化し、生殖機能を有し自ら種族を存続させることが可能とされている。そして、サラの両親はレプリカントだった。なので、サラも実は人間ではなくレプリカントだったのだ。また、サラには双子の妹がいて、彼女は誕生した宇宙船の船内でコンピューターに保護され、年齢は10歳だった。彼女の名は、レイチェルといった。
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