ライド(Ride)@EX-Theater
個人的に、観るのは去年2月の東京ドームシティホール公演以来。今回は、新譜『This Is Not A Safe Place』を引っ提げての来日だ。
定刻を10分ほどまわったところで客電が落ち、新譜のオープニング曲でもある『R.I.D.E.』をSEとして、ステージ向かって左の袖からメンバー4人が登場。全員がTシャツ姿という、ラフないでたちだ。
フロントのマーク・ガードナーはずんぐりむっくりの体型に、頭部はほぼ坊主という風貌に。90年代のアイドルチックなルックスを思うと、その変貌ぶりに年月を感じはするが、しかしヴォーカルは少しも変わっていない。間奏になると、マイクスタンドの前から離れて、ステップを刻んだり上体を大きく揺らしながらギターを弾いていた。
向かって右にはスティーヴ・ケラルトで、「POST PUNK」とプリントされたTシャツを着て、結構低い位置に構えてベースを弾いていた。中央奥にはロズ・コルバートが陣取り、ドラムもさることながら曲によってはコーラスもこなしていた。マークとスティーヴは、次の曲を始めるときにほぼ毎回ロスを確認していた。
そして、ライブ中ワタシが最も観ていたのがアンディ・ベルだ。ライドはかつてシューゲイザーバンドと位置づけられていたが、実際の彼らは靴を凝視するようにしてギターを弾くことは稀だった。ところが、この日のライブではアンディがまさに凝視するようにうつむいてギターを弾いていた。オールバックにした凛々しい風貌は俳優もできそうだが、その面を前に向けるのは稀だった。
2人のギタリストの足元には、多くのエフェクターがセットされていた。アンディは7、8個くらい、マークのは10個以上はあったように見えた。忙しく駆使していたのはマークの方で、アンディがまめに使い分けるようになったのは終盤だ。また、スティーヴも含め3人は、ほぼ1曲毎におのおのの楽器を交換していた。
セットリストは、新譜および前作『Weather Diaries』からの曲が中心になった。この2つの作品特に新譜は、以前のようなノイジーな曲もあることはあるが、彼らがその年齢なりに作ったかのような落ち着いた、そしてもの悲しさが漂う曲も結構あって、最初に聴いたときはかなり違和感があった。がしかし、この日に備えて聴き直しそして生演奏を体感してみると、妙にしっくりきた。なぜかと少し考え、秋という季節感にフィットしていたのだと思う。
再結成以降の曲の演奏が充実しているからこそ、初期の曲が放たれたときに押し寄せる感動と言ったらこの上ない。『Leave Them All Behind』こそ前半で演奏されたが、『OX4』は中盤のハイライトになった。ステージには装飾らしい装飾はないが、ライトが数多く設置されていて、モグワイばりにヴァリライトが閃光したり、流星のように10本くらいのライトがステージ上部から斜めに降り注いでいた。
本編ラストはファースト『Nowhere』からの『In A Different Place』『Vapour Trail』ときた。特に後者は、ワタシが最も好きなライドの曲なので、この局面で披露してくれたのが嬉しかった。名曲は、あっさりと時代を越えてくる。アンコールは、新譜からの『In This Room』を経て、締めは『Seagull』だ。スティーヴによるベースのイントロだけで、心が踊った。
セットリスト
R.I.D.E.(SE)
Jump Jet
Future Love
Leave Them All Behind
Charm Assault
Chrome Waves
Fifteen Minutes
Shadows Behind The Sun
Repetition
Lannoy Point
End Game
All I Want
OX4
Taste
Kill Switch
Drive Blind
In A Different Place
Vapour Trail
アンコール
In This Room
Seagull
ツインギターのバンドは、ありそうでいて実はそんなにはいない。多くのバンドでは、メインとサブの格付けがはっきりしている。その意味でもライドの存在は貴重で、個人的にはテレヴィジョン以来ではないかと思っている。
付け加えるなら、マーク・ガードナーとアンディ・ベルのツインヴォーカルとツインコーラスは、このバンドを更に独自の存在にしている。再結成が一時的に終わらずパーマネントになっていることを嬉しく思うし、アンディは最後に「see you soon」と言ってくれた。来年、フェス辺りで再来日してくれるかも。
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