アド・アストラ(ネタバレあり)
近未来。宇宙飛行士ロイの父クリフォードは、20年前に地球外生命体を調査するリマ計画で海王星まで向かったが、その後消息を絶ち、亡くなったとされていた。ロイは上官に呼び出され、父が生きている可能性があり、火星から父に向けてメッセージを発信する任務につく。
いわゆる未来宇宙もので、個人的には映像美を期待して劇場に足を運んだ。そのクオリティには満足している。予告編でも確認できた、地球から宇宙に突き出したアンテナを整備する場面は序盤になり、圧倒的で視覚に訴える。終盤、ロイが父を探しに向かう途中で通過する木星や土星は美しく、海王星の環をなす宇宙塵はリアルだった。
映像美を一層引き立てているのが、音楽だ。調べてみると、マックス・リヒターという人が手がけていることがわかった。ワタシは観たことのある作品だと、「メッセージ」(オープニングとエンディングに曲が使われている)、「メアリーとエリザベス」などを担当している。美しさと恐怖が隣り合わせになっている宇宙空間を、出すぎず引きすぎずの絶妙な具合で表現している。
一方、設定においては揚げ足を取りたくなる。巨大アンテナから落下して地上に落ちたのは、軽傷では済まないはずだし、いくら訓練されたと言えど途中で気を失うのでは?と思う。月への宇宙船に乗っていたのは高齢者も少なくなく、体力的に耐えうるのかとも思う。月から火星、火星から海王星に向かう際の宇宙船内でもひと悶着あるのだが、その結果船内の計器が故障してトラブルが発生してもおかしくないのにと思う。
根幹にあるプロットは、ロイと父クリフォードの親子愛だ。ハリウッド映画で描かれる親子愛は、近年は父親と娘が多いように思い、父親と息子の愛を息子の側から描いているのは、ちょっと新鮮。しかも、お互いに複雑な事情を抱えていて、特に父クリフォードの狂人ぶりはすごい。あと、ロイが宇宙に出た際に過去を回想する映像が混入するのだが、これがとてもわかりにくかった。
キャストは、ロイにブラッド・ピットで、制作にも名を連ねている。クリフォードは、トミー・リー・ジョーンズ。ロイの上官でクリフォードと同僚だった大佐を、ドナルド・サザーランド。2人の大物は時間的には少ない出番だが、存在感の大きさはさすがだ。
ロイの元妻を、リヴ・タイラー。ロイがビデオレターで彼女を見るという登場の仕方につき、エンドロールを見るまで気づけなかった(汗)。ロイを海王星に送り出す手助けをする火星基地の所長は、ルース・ネッガという人。どこかで観ているはずと思い調べたら、「エージェント・オブ・シールド」のレイナの人だった。
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