ロック・クロニクル・ジャパン Vol.2 1981ー1999
日本のロックの歴史を綴った、「ロック・クロニクル・ジャパン」。Vol.2は1981年から1999年までを取り扱い、Vol.1と同年の1999年に出版されている。
Vol.1が黎明期だとすれば、Vol.2は発展・拡張期とでも言えばいいだろうか。ロックの大衆化、イカ天~バンドブーム、インディレーベル、CMタイアップ、プロモーションビデオの普及、小室哲哉や小林武史などプロデューサーの台頭、などのムーヴメントがあった。パンク、テクノ、ビジュアル系、ラップ、ヒップホップ、など、新たなジャンルも見られる。
インタビューを取っているのは、矢野顕子、佐野元春、山本精一など、若い人よりもある程度以上のキャリアを積んだ人たちが多い。そして、Vol.1に続いて矢沢永吉が登場。日本のロックアーティストとして第一線でい続けていることの証だろう。
ピックアップされているアーティストは、メジャーから全く聞いたことのない人・バンドまでと、更に多様化している。その中でも、ユニコーン~奥田民生、フリッパーズ・ギター~コーネリアス(小山田圭吾)への評価がすこぶる高い。一方で、細野晴臣、鈴木慶一、白井良明などが、自身の活動もさることながら、プロデューサーや曲提供などであちこちに名前が出ていて、恐ろしい仕事量だ。RCサクセション~忌野清志郎、オフコース~小田和正は、もっと大きく扱われてもいいのになと思う。浜田省吾の扱いが少なすぎるのは、なんだかなあという感じ。こうした不満を覚えるのも、80年代から90年代の多様さゆえだろうか。
音楽評論家によるコラムやトピックも満載だが、媒体やプレーヤーの変化による音楽の聴き方の変化についての考察が興味深い。アナログレコードがCDになったこと、廃盤だったアルバムが再発されたこと、ウォークマンの流通により音を気軽に持ち出せるようになったことなど、今では当たり前のことだが、当時は革新的だった。
アルバム紹介では、SMAPや小泉今日子といったアイドルも散見される。また、女性アーティストを、積極的にピックアップしているようにも見える。森高千里やプリンセス・プリンセスなどを経て、98年デビューの宇多田ヒカルと椎名林檎に着地させているようだ。
Vol.1で扱っている70年代よりもVol.2の80~90年代の方が世代的に自分に近いはずだが、2冊を読んでみてVol.1の方が面白く感じ、より興味を引いた。Vol.2の時期は、自分が洋楽に向いていたこともあるのかな。
そして、2冊とも出版は20年前。今年あたり、Vol.3として2000年~2019年が発表されてもタイミング的にはいいような気がする。この20年に起こった大きなトピックは、ロックフェスティバルが毎年全国あちこちで開催されるようになったこと、音楽を聴く手段がiPodやスマートフォンに移行したこと、ストリーミング試聴がCDに取って替わりつつあることなどだろうか。
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