爆裂都市 BURST CITY(1982年)
舞台は、自由や快楽、暴力が渦巻く都市。人気ロックバンド、バトル・ロッカーズとパンクバンドのマッド・スターリンとの対立があり、お互いのファン同士も衝突する。一方、この都市に原子力発電所建設の話があがり、土地開発を束ねる暴力団は住民たちに強制労働を強い、ついに住民たちの怒りが爆発し、暴動へと発展する。
ナレーションもなく、登場人物のセリフも少ないため、ストーリーや状況設定については観る側がくみ取って行かなければならない。なので、観る人によっては、訳がわからない単なるバイオレンス映画と思われて終わってしまう可能性もある。ただ、うまくくみ取りさえすれば、アンダーグラウンド映画ながら、現在でもカルト的人気を誇る作品であることを実感できる。『マッドマックス2』(ほぼ同時期に公開)やクエンティン・タランティーノ作品のような性格を秘めていると思う。
バトル・ロッカーズは、ロッカーズの陣内孝則とルースターズの大江慎也・池畑潤二らから成る、言わばドリームバンドだ。陣内は俳優としての原点がこの映画になり、当時はロックバンドとして活動。この後ロッカーズは解散し、本格的に俳優業に転身することとなる。リーゼント頭の陣内は、その後のどこかコミカルな雰囲気漂うキャラとは大きく異なる、反逆のエネルギーを爆発させている。
対立するマッド・スターリンは、まさに遠藤ミチロウのスターリンで、豚の首や臓物などを投げ入れるパフォーマンスは、当時実際にスターリンがやっていたことだそうだ。流れ者兄弟の弟は、今や芥川賞作家の町田康(当時は町田町蔵)。つまりこの映画は、日本のロックバンドがダイレクトに映像化された、極めて稀な例になる。
そのほか、泉谷しげる、室井滋、上田馬之助、コント赤信号などが出演。監督は石井聰亙。制作陣を見てみると、企画には泉谷も関わっていた様子。美術には後に『どついたるねん』を監督する坂本順治、デザインにはビジュアリスト手塚真の名も確認できる。
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