ルトガー・ハウアーさん死去
俳優のルトガー・ハウアーさんが7月19日に亡くなられていた。75歳だった。
オランダの出身で、地道に役をこなしながら、やがてハリウッドに進出。ワタシがはじめて観たのは、「ナイトホークス」でのテロリスト役だった。シルベスター・スタローン演じる刑事の側から観ていたが、その一方でハウアーさんの冷徹な悪役には凄味があった。この映画、音楽はキース・エマーソンが担当していた。
他には、「バットマン・ビギンズ」「GOAL!2」「ヴァレリアン」といった作品で、脇を固める役どころとして出演しているのを観たことがある。
しかし、この人といえば、なんと言っても「ブレードランナー」でのレプリカントのリーダー、ロイ・バッティだ。レプリカントとは、人間が行けない危険な地で作業するために作られた人造人間で、力は人間をはるかにしのぐが、4年しか生きることができない。限られた時間しか生きられないからこそ、より人間らしくあろうとする。
生みの親であるタイレル博士を追い込み、レプリカントの寿命を延ばすよう迫るが、できないと知るや博士の目をつぶすシーンは、狂気に満ちている。しかし、それは生への執着の裏返しでもある。そして、クライマックスでのデッカードとの対決だ。ビルから転落しそうなデッカードを引っ張りあげると、自分はどう生きて何を見たかを語り、お前はどう生きるのかとデッカードに突きつけて事切れる。このセリフは、ハウアーさんのアドリブだったそうだ。
「北斗の拳」を描いた原哲夫は、主人公ケンシロウのモデルはブルース・リーと松田優作のミックスだと公言している。しかし、実はラオウにもモデルがいて、それがハウアーさん演じるバッティだった。先日、BSで「セカンドの美学」というタイトルでラオウを特集した番組が放送されていて、そこでもハウアーさん/バッティに触れられていた。
「ブレードランナー」のメイキングでは、この役を演じられたことに満足げだった。作品自体とてつもなく素晴らしいが、役を観る側に記憶されるのは、俳優として幸福だったと言えるのではないだろうか。謹んで、ご冥福をお祈りいたします。
関連記事
-
ヴァンゲリスさん死去
作曲家のヴァンゲリスさんが、先日5月17日に亡くなられていた。79歳だった。現時点で死因は明
-
デンジャラス・デイズ メイキング・オブ・ブレードランナー(2007年)
公開時こそ興行的に目立った成果は得られなかったが、家庭用ビデオやケーブルテレビなどの普及にリ
-
メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット
映画『ブレードランナー』の制作時から取材を敢行し、作品の裏側を克明に綴った書籍が1997年に
-
ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』
近未来。ケイスは、かつては電脳空間に没入(ジャックイン)して情報を盗み出す凄腕のハッカーだっ
-
ブレードランナーLIVE@オーチャードホール
スクリーンに映画を流しながらオーケストラが生演奏する、シネマコンサート。興味はあったが、つい
- PREV
- 「イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語」を観た
- NEXT
- 遠藤ミチロウさん死去