ジョージ・オーウェル『1984年』
世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3国にて分割統治され、各国間での戦争は絶えず続いている。舞台は、オセアニアのロンドン。街中には至るところに監視カメラがあり、人々は常に当局に監視されていた。思想や結婚の自由はなく、記憶は常に改ざんされ、どれが事実でどれが虚偽なのかがわからなくなっている。
主人公のウィンストンは真理省の役人だが、ある日日記に自分の思ったことを書くという、禁じられた行為に手を染める。今の世の中に疑問を抱くウィンストンは、やがてジューリアという女性と知り合い、密会を重ねる。しかし密告によって2人は当局に捕らえられ、拷問を受けながら洗脳されてしまい、当局への服従を誓うのだった。
執筆された時期からして、戦後のソ連をモデルに描かれたと言われている。ディストピア(反ユートピア)作品の傑作とされ、この作品にインスパイアされたアーティストは少なくない。デヴィッド・ボウイの『Diamond Dogs』、レディオヘッド『Hail To The Thief』の『2+2=5』、ミューズ『The Resistance』などがそれだ。映画「未来世紀ブラジル」の世界観も、非常に近い。
ミューズの『The Resistance』には、『United States Of Eurasia』という曲があったり、歌詞の中に「思考警察」など、この作品中のことばがまんま登場する。ミューズがアルバムをコンセプチュアルに仕上げたのは、思考や思想を制限されている世界観は、今の世の中でもさして変わらないだろうという見方と、それに対する反抗なのだと思う。
この小説、映画化もされていて音楽をユーリズミックスが担当している。日本未公開作品とのことだが、ビデオやDVDで入手可能だ。