白い巨塔(1966年)
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最終更新日:2024/05/20
邦画
山崎豊子原作の小説で、何度となくテレビドラマ化もされている作品である。最初の映像化は、1966年に公開された劇場版だ。
浪速大学の助教授財前五郎は、外科医としての腕は超一級だが、地位と名声と金を追い求め、医師としてのモラルを欠く野心家だ。財前は第一外科の東教授定年に伴い次期教授の座を狙うが、東は別の候補を立てるべく奔走。学閥・派閥抗争がひしめき、票取りのための裏工作が成される中、決選投票で財前は教授の座を勝ち取る。がしかし、選挙と前後して自分が執刀した患者が亡くなり、遺族が財前の誤診だとして裁判を起こす。
結局、誤診とする決定打がなかったため財前側が勝訴したところで終わっているが、ワタシはあれっと思った。以前観たテレビドラマ版では、一審では財前側勝訴となるも、控訴審で遺族側が勝ち、その判決が出た直後に財前が倒れ、やがて亡くなってしまうという結末だったからだ。そこで調べてみると、原作は映画と同じところで終わっているが、実は『続白い巨塔』が執筆されていて、ドラマの方は『続』までフォローした内容になっていることがわかった。この映画は1966年の作品で、ワタシが観たドラマは1978年の作品だ。
劇場版では、財前五郎の生い立ちについても描かれている。幼い頃に父を亡くし、貧しい家庭で母ひとり子ひとりで育てられた五郎は、浪速大学医学部に入学。卒業後、産婦人科医で資産家の財前家に婿養子入りし、大学病院で外科医として力をつけていく。しかし実母への思いは少しも薄れてはおらず、定期的に仕送りもしていた。実母が元気なうちに教授の座を手に入れたいという気持ちがあって、こうした生活環境がここまで地位や金に固執する人間を作り上げたということになっている。
キャストは、財前五郎を田宮二郎、東教授を東野英治郎、財前の同僚医師里見を田村高廣、財前の愛人を小川真由美。先に観ていた1978年テレビ版では、里見が山本學、愛人が太地喜和子だった。
劇場版の財前五郎は、選挙の結果にびくびくして、周囲に盛り立てられてやっと持ちこたえている面があるのだが、テレビの方は更にアクが強くなり、ふてぶてしい人物像になっている。演じるはやはり田宮二郎で、鬼気迫る演技に自ら行き詰まってしまったのか、ドラマ収録完了直後に自殺している。ワタシが田宮二郎を知ったのはこの作品がきっかけで、勝新と組んで映画『悪名』シリーズをやっていたことは、この後に知る。役がそのまま俳優の分身的存在にまでなるのはまれにあることだが、田宮二郎にとっては、『白い巨塔』の財前五郎がそれだったに違いない。
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