グリーンブック(ネタバレあり)
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最終更新日:2024/10/13
ヴィゴ・モーテンセン ヴィゴ・モーテンセン
1962年のニューヨーク。ナイトクラブで用心棒をしている、トニー・ヴァレロンガ。クラブが閉鎖になってしまい、カーネギーホールで暮らす黒人ピアニストのドン・シャーリーの、アメリカ南部ツアーの運転手兼用心棒の仕事を引き受ける。
ドンは世界的なピアニストだが、アメリカ南部では多くの差別を受ける。宿泊できるホテルは制限され(タイトル「グリーンブック」は黒人が宿泊可能なホテルをまとめた冊子のこと)、白人とは別のトイレ、楽屋は物置き、バーでは絡まれ、警察には言いがかりをつけられる。しかしドンは誇りを失わず、毅然とした態度を崩さない。
トニーにも、黒人に対する差別意識はあった。序盤、自宅に来た黒人2人が使ったコップをゴミ箱に捨てている。しかし、共に旅をする中、ドンの姿勢を見て考えが変わってくる。トニーのツアースケジュールをキープしようとし、給料のためだけでなく、時には危険や差別からトニーを守る。トニーのプロ意識の高さに、ドンの見方も変わってくる。
トニーとドンは境遇もキャラクターも真逆だが、いろいろと複雑で、単純にイタリア系白人と黒人ピアニスト、とは言い切れない。トニーはニューヨークのブルックリンに暮らし、生活は決して裕福とは言えない。がさつでことば使いも乱暴だが、家族想いの一面もある。ドンは天才ピアニストでいくつもの博士号を持つ知性があるが、妻とは離婚し家族とは連絡をとらず、そして公にはしたくないセクシャルな一面も持っている。そんな2人は、いつしお互いを補い合う仲になる。
トニーを、ヴィゴ・モーテンセン。かつては「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで王子アラゴルンを演じ、凛々しいイメージだった。今回は、役のために14キロ増量して肥満体になり、劇中では常にタバコを吸い、食べ続けていて、アラゴルンの面影はほとんどない。ドンはマハーシャラ・アリという人で、教養はあるが常に気難しそうにしている、複雑な役柄をこなしている。
実話をもとにした作品で、脚本にはトニーの息子さんも携わっているとのこと。先日発表されたアカデミー賞で、今作は作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞している。予告編を見ていたときは、マハーシャラ・アリの方が主演でヴィゴ・モーテンセンが助演に見えたが、本編ではヴィゴ/トニーの側から描かれている。ヴィゴも、主演男優賞にノミネートされていた。
真逆の男性2人が当初は違和感を抱えながら徐々に打ち解けていく、というプロットは、以前「最強のふたり」で観ている。なので、個人的にストーリーとしての真新しさは感じない。が、ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの存在感の大きさやキャラクターの強さが突出していて、このふたりが演じるトニーとドンもまた「最強のふたり」だと言いたくなる。エンドロールの直前にその後のふたりについて紹介されていて、生涯を通じて友人であり続けたとのこと。そして2013年、数ヶ月の差で共に亡くなられたそうだ。
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