機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY
地球連邦軍とジオン公国の1年戦争末期、宇宙世紀0079。スペースコロニーサイド4、ムーアはかつてジオンの襲撃で破壊され、コロニーの残骸が漂う宙域は、稲妻が閃光することからサンダーボルト宙域と呼ばれていた。ムーア市民の生き残りで結成された連邦軍所属のムーア同胞団は宙域の奪還を目指し、一方のジオンはリビングデッド師団を宙域に展開させていた。
ムーア同胞団のイオ・フレミングは腕利きモビルスーツパイロットで、フルアーマーガンダムで戦場に繰り出す。リビングデッド師団の両足が義足のダリル・ローレンツは、超一級スナイパー。しかし待機中に左手を失い、また軍の命令で右手までも切断される。それは、脳の思考でモビルスーツを操縦可能にするリユース・サイコ・デバイス(RPD)を行使してサイコザクを操るためだった。
ファーストガンダムのスピンオフ的位置づけで、連邦もジオンも人員が足りず、実戦経験のない学徒を動員せざるをえないさまは、世界観を共有できている。ジムやボールやゲルググなどの、量産機が飛び交うのも同様。その一方で、フルアーマーガンダムやサイコザクのモビルスーツとしての完成度の高さは、ファーストの設定ににとらわれることなくハイテク兵器として発展させている。
キャラクターやパイロットとしての能力からするに、イオの方がオールドタイプ、ダリルはニュータイプに準ずる存在だと思う。2人とも小型ラジオをコクピットに取り付けていて、イオはジャズ、ダリルはポップスを流している。アムロとシャア、カミーユとジェリドとはまた違った、ライバル関係が成立している。
ストーリーは、イオとその幼馴染で艦長代理を務めるクローディアおよびメカニックのコーネリアスら、つまりムーア同胞団/連邦側からの視点で描かれることが多い。しかし、ダリル/リビングデッド師団/ジオン側も丁寧に描かれている。イオはダリルに敗れて捕虜になり、ぼこぼこにされてしまうが、ア・バオア・クー陥落の混乱に乗じて脱出し、仲間と合流。したたかでふてぶてしくやさぐれた主人公は、ガンダムとしては異端だろう。ダリルの方が、むしろ正統派のイメージだ。
RPDは、劇中の時間軸としては後の「逆襲のシャア」「ガンダムUC」「ガンダムNT」でのサイコフレーム技術のルーツに当たるように感じていて、次作「BANDIT FLOWER」でも焦点になっている。
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