村上春樹『ノルウェイの森』
原作未読の状態で、映画「ノルウェイの森」を観た。観賞後は正直なところもやもやしまくりで、その最たるはなぜ「ノルウェイの森」というタイトルになっているかが、映画を観ただけではわからないようになっていたからだ。もしかして、原作にある重要な要素がカットされているのではと思い、後追いで村上春樹の原作を読んだ。
上下巻あるが、映画は思った以上に原作に忠実だった。特に、上巻はほぼ再現されていた。しかし下巻になり、映画にはない要素がいくつも垣間見られた。ワタナベが、緑の父を見舞うシーン。療養所で、自身も患者でありながら直子の面倒を見る役を担い、ワタナベと直子の橋渡し役だったレイコが、療養所に入った衝撃の理由をワタナベに告白するシーン。
そして、タイトル「ノルウェイの森」だが、映画で描かれていたのは、療養所に行ったときに直子がレイコにリクエストし、レイコがギターでビートルズのこの曲を弾くというくだりくらい。では原作はというと、まず冒頭で、30代のワタナベが機中でこの曲を耳にして直子のことを思い出して涙し、当時を回想する。またラス前、ワタナベとレイコが直子の葬式をするのだが、そこでレイコはギターで洋楽を中心にさまざまな曲を弾き、この曲を2度弾いている。なるほどと納得した反面、映画はココをカットするかよとも思った。
映画はワタナベと直子の2人に焦点を当て、どちらかというとワタナベは狂言回しの役で実質的な主人公は直子に思える。対して原作は、あくまでもワタナベの目線から描かれており、もちろん直子が最重要人物ではあるのだが、緑、レイコ、永沢、ハツミ、突撃隊といった、周囲のキャラクターを満遍なく描いている。
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