ドラゴン・タトゥーの女(2012年)
公開日:
:
最終更新日:2022/08/13
ドラゴン・タトゥーの女 ルーニー・マーラ, レッド・ツェッペリン
スウェーデン。実業家に名誉毀損で訴えられ、敗訴し意気消沈しているジャーナリストのミカエル。そんな彼に、ヴェンゲル財閥の元会長から依頼が舞い込む。表向きは家族史の編纂だが、元会長の真の依頼は40年前に起こった孫娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。一族の過去を洗い、やっと小さな手がかりを掴んだミカエルは、リスベットという助手を迎えることに。彼女は天才ハッカーにして、ヴェンゲル財閥の依頼によりミカエルの身辺調査をした人物だった。
劇場にも観に行ったが、そのきっかけは内容やキャスト以上に音楽だった。当時ナイン・インチ・ネイルズ活動休止中だったトレント・レズナーがサントラを担当し、静かで淡々とした世界観はサスペンスの空気を一層色濃くする。そして何より、カレン・Oをヴォーカルに迎えた、レッド・ツェッペリンのカヴァー『The Immigrant Song』が抜群にいい。映画のオープニングで早速流れ、PV調の映像もカッコよくて、これだけでもう引き込まれた。
ミカエルとリスベットが直接接触するのが話の中盤で、そこまでの展開は正直遅いと感じ、これ真相究明に至らずにうやむやで終わってしまうのではと少し焦った。しかし、2人共同で情報収集に当たるようになってからは展開が急加速し、ひと安心。前半部はミカエルの動きやヴェンゲル家よりも、リスベットについての描写が中心だったと思う。ヴェンゲル家の設定やミカエルが調査するアプローチの仕方には、金田一耕助シリーズに近い感触がある。
劇場で観たときにはよく理解していなかったが、ミカエルがヴェンゲル家取材の依頼を引き受けた直接の理由は、冒頭の敗訴した裁判をひっくり返す実業家の証拠を提供されるのが報酬に含まれていたからだった。しかし、ハリエットの件が決着した後に得た証拠が実はたいしたことがないとわかり、がっくりするミカエル。そんな彼になり代わり、ハッキングと資金操作で実業家を追い込んだのが、リスベットだった。ラストで、彼女はミカエルにクリスマスプレゼントを持っていこうとするのだが・・・。
キャストは、ミカエルにダニエル・クレイグ、リスベットにルーニー・マーラ。とにかく、細身で華奢なルーニー・マーラの身体を張った演技が凄まじく、ストーリーもさることながら、この作品は彼女のための作品と言って過言ではないと思う。『ソーシャル・ネットワーク』では主人公ザッカーバーグがフェイスブックを立ち上げるきっかけとなる元彼女役だが、地味で損な役どころで、とてもリスベットを演じたのと同じ人とは思えない。いやー、化けた。監督はデヴィッド・フィンチャーで、映像の美しさと過激な描写とを同居させ、メインストリームとは異なるポジションから切り込むスタンスはこの人らしい。
関連記事
-
蜘蛛の巣を払う女(ネタバレあり)
スウェーデンのストックホルム。天才ハッカーのリスベット・サランデルに、AIの権威バルデル博士