エリック・クラプトンー12小節の人生ー(ネタバレあり)
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Eric Clapton エリック・クラプトン
エリック・クラプトンのドキュメンタリー映画を観てきた。冒頭が2015年のB.B.キングへの追悼コメントで、以降誕生から幼少時代、音楽との出会い、プロとしての活動となっていく。クラプトン本人がナレーションを務めるほか、関連のあった人のコメントが多数あり、また貴重な映像がいくつも登場する。
本人が直接関わっているドキュメンタリーでありながら、キャリアを美化し讃えるという内容にはなっていない。むしろ、生きざまの大半は苦悩に満ちていて、それを隠さずさらけ出していることに、この映像の意味はあるのだと思う。そして、キーパーソンは3人いた。
ひとりめは、クラプトンの実母だ。カナダ人の兵士とゆきずりの恋に落ち、ティーンエイジャーにしてクラプトンを出産。彼女は祖父母に預け、クラプトンも祖父母を実の両親だと思っていたが、後に真実を知る。その後実母は別のカナダ人と結婚して実家を訪れ、クラプトンは母と呼んでもいいかと直接聞くのだが、彼女は拒絶した。クラプトンは、母の愛を知らずに育った。
ふたりめは、ジョージ・ハリスンの妻パティだ。ジョージとクラプトンはよき友人関係だったが、クラプトンはパティをひと目見て心を奪われた。2人の自宅は近く、クラプトンは頻繁にジョージ宅を訪れてはセッションをしていたのだが、ジョージが不在でも訪れるようになっていた。やがてパティに手紙を送り、その後告白。ジョージにもそのことを告げた。『Layla』が出来上がったときにパティに直接聴かせ、彼女は自分に向けられた歌だとすぐわかったそうだ。この辺りの描写が、かなり生々しかった。
クラプトンのキャリアにおいて、70年代前半にドラッグに溺れ、それを克服し復活を果たしたというストーリーは聞き知っていた。しかし実際はアルコール依存症の方が深刻で、10年以上も続いていたのは知らなかった。パティはやがてジョージと離婚し70年代後半にクラプトンと結婚するが、それでもアルコール依存症は治らず、別の女性と関係を持つようになっていた。パティとクラプトンは後に離婚する。
3人目は、イタリア人女性との間に生まれた息子コナーだ。長きに渡るアルコール依存症と真剣に向き合い克服するきっかけになったのも、コナーの存在だった。リビングでコナーを溺愛するクラプトンのショットが続くが、この後どうなるかを知っているだけに、観ていて胸が締め付けられる思いがした。
ヤードバーズやブラインド・フェイス、終盤のアンプラグドのライヴなど、アーティストとしての映像は観たことがあった。一方、オフショットはほとんど観たことがなく、ドラッグやアルコールでラリっているさまや、自宅でバンドメンバーやその家族とリラックスしおどけているさまは、そもそも映像として残っていることに驚いた。
中盤から後半までがほぼほぼダウナーだったが、『Tears In Heaven』でグラミー受賞した辺りから、やっとトーンが上向きになる。コナーの前に別の女性との間に生まれた娘が2011年に結婚したときのツーショットや、現在の夫人(パンフレットによると2002年に結婚)との間に設けた3人の娘が、2014年の武道館公演(!)で紹介されるショットなど、幸せに包まれているさまが伺える。
ラストは、クロスロード・ギター・フェスティバルでのB.B.キングによるMCだ。クラプトンに感謝し讃えることばを、ステージのオーディエンスだけでなく、袖でキングを見ているクラプトンにも贈っている。冒頭が伏線になっていて、ここで回収されたのだ。
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