椎名林檎と彼奴等の居る真空地帯(DVD)
椎名林檎が3月から5月にかけて行ったツアーの映像作品が、早くもリリースされている。5月17日のNHKホール公演を収録していて、個人的にはこの公演の前の週に行われた名古屋公演に足を運んでいた。当初、このツアーには「ひょっとしてレコ発」というツアータイトルがついていた。
ディスクをプレーヤーに入れると、すぐさま映像本編がスタート。ステージのバックドロップに表示されたタイムカウンターがクローズアップされる中、メンバーが登場しそれぞれ持ち場につく。残り10秒で場内が自然にカウントダウンをはじめ、そして林檎が登場しカウンターがゼロになったところで、『人生は思い通り』でスタートする。
映像はスペースシャトルになり、宇宙空間の広大さが彼女の表現者としてのスケールの大きさにリンクしていると感じる。パートナーの児玉裕一が手がけていることもあってか、ここ数年の彼女のライヴでの映像のクオリティーは異様に高い。バンドメンバーやスタッフのクレジットも映像にて早々に紹介され、これは結構意表を突く試みだと思う。
生ライヴは、座席に恵まれれば臨場感を全身で体感することができ、後方だった場合はステージの全体像を見渡すことができる。名古屋で観たときは1階4列目というかなりの好ポジションだったので、前者の方だった。もちろん視線の多くは林檎に行ってしまうのだが、名越やヒイズミ、ホーン隊のほか、ワタシのポジションとは反対側だった鳥越やみどりんのプレイも思った以上によく見えた。
ではパッケージ化された映像作品はというと、自分のポジションではないアングルでライヴを楽しめるほか、客席からでは到底見ることのできないところにカメラが及んでくれることがあり、そこがどうなっているかを見る楽しみがある。
今回は、各メンバーを真上から捉えたショットが何度かあって、これがとても新鮮だった。特にギターの名越の足元にはかなりの数のエフェクターが並べられていて、この人の多種多彩な音色がこうやって発せられているのかという、一端を垣間見た気がした。『暗夜の心中立て』のとき、林檎は終盤でステージに倒れこみながら歌っていたのだが、会場で観たときはステージに近すぎる&前列中央部の客の影になってしまって、彼女がよく見えなくなってしまった。ステージに寝転んだ彼女を真上のアングルから見るのは、なんとも不思議な感覚だった。
MCは、名古屋とこのNHKホールとでほぼ同じだったようだ。『静かなる逆襲』のイントロ部のときに林檎は「SMAPでーす」と言い、アンコールではヒイズミが「アンコールありがとーーー」と言っていた。林檎ほかメンバーが着ていた衣装も、恐らく同じだったと思う。オーラス『野性の同盟』は、終盤で林檎が去った後にステージはスモークで覆われ、演奏を続けるメンバーの姿も見えなくなった。演奏は途中からテープ音源に入れ替わり、スモークが消えたとき、ステージは無人になっていた。
個人的には2014年にさいたまスーパーアリーナで観た『林檎博'14 -年女の逆襲-』で何度目かのピークを迎えたと思っている。以降のツアーでは、こういうやり方もある、こういうアプローチもあるという、アナザーサイドを追求することで、アーティストとしての幅を一層広げていっているように思える。彼女のこうした姿勢を、支持したいと思う。
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