フィリップ・K・ディック『空間亀裂』
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最終更新日:2022/03/16
フィリップ・K・ディック ディストピア, フィリップ・K・ディック
亡くなって30年以上経つSF作家、フィリップ・k・ディックの長編作が、2013年に邦訳され刊行された。
西暦2080年。人口爆発に苦しむ世界において、有色人種は冷凍化され、避妊具は無償で配布され、売春は合法となって、地球の軌道には娼婦衛星がまわっていた。初の黒人大統領を目指すブリスキンは、解決策として惑星移民の再開を宣言する。
ある医師が使う超高速移動機の内部には亀裂が生じていて、修理をする代理店は亀裂の向こうに別の世界を見る。それは、人間ではなく進化した原人の姿だった。ブリスキンは、亀裂の向こう側を移民先にできないかと思案する。
黒人アメリカ大統領は、現実世界では2009年に誕生してしまっているが、この本が書かれたのが1966年とのことで、今よりはるかに人種差別がひどかった時期と思われる。他にも、娼婦衛星を仕切るシャム双生児(その正体は途中でわかるが)や臓器売買など、今の世の中の問題を先取りしたかのような設定が少なくない。
本作はディック自らが失敗作と言い切ってしまっているとのことだが、個人的には結構楽しめた。別の世界とはいわゆるパラレルワールドで、ジョジョ第7部以降もそうだが、並行世界が描かれるのは読んでいてわくわくしてくるのと同時に、この世界観を表現できる作者に感服する。
この人の作品は数多く映画化されているので、本作も近い将来にハリウッド作品として劇場でお目にかかれるかもしれない。
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