ボブ・ディラン(Bob Dylan)『ネヴァー・エンディング・ストーリー ー1990-2006ー』
ボブ・ディランのドキュメンタリー映像シリーズ最終章のVol.4で、取り扱う時代は1990年から2006年。現在のディランに直結している年代だ。
序盤はまたもや酷評からだ。絶賛された前作『Oh Mercy』と比較されて『Under The Red Sky』がこきおろされ、1991年グラミー功労賞受賞でのパフォーマンスも最悪とまで言われている。湾岸戦争を意識して『Masters Of War』をバンドバージョンで歌うのだが、何を歌っているのか聴き取れないとのこと。ディランの歌が聴き取りにくいのは、今では当たり前と思うけど。
続くカヴァー集2作でのルーツ回帰を経て、復活に向かうという論調だ。リリースされる作品毎にチャートアクションや作品評価、受賞歴紹介などが続く。Vol.3『ボス・エンズ・オブ・ザ・レインボー』に登場していたのとほぼ同じ音楽評論家が、引き続きコメントしている。『Good As I Been To You』と『World Gone Wrong』はセットで語られることが多いが、方向性は異なっていることを指摘。そして、ディランの声は『World Gone Wrong』でカヴァーしたブルースに合っているとも。
さすがに時代が近いこともあってか、映像は豊富だ。ウッドストック'94やMTVアンプラグド、『Time Out Of Mind』でのグラミー受賞パフォーマンスなど、見覚えのある映像が続く(1992年の30周年記念コンサートがスルーされていたのは意外。このころになるとPV制作も割とコンスタントに行われていて、アカデミーを受賞した『Things Have Changed』なども流れていた(この曲、近年のディランのライヴのオープニング曲だ)。
息子ジェイコブ・ディランの、ウォールフラワーズまで取り扱ったのは意外だった。ディランがジェイコブについて公式にコメントしたことはないと思われるが、評論家がディランはジェイコブの活動を喜んでいるはずとコメントしていたのには、いい意味でちょっとびっくりしている。
ディランは80年代は無理に自分を時代に合わせようとして失敗し、迷走していたとされている。対して90年代以降は、時代とは適度に距離感を保ちつつ、自身の年齢なりの表現をコントロールできるようになり、それがかえって新しく輝いて見えるようになった。まさに、一周まわってなんとやらだ。サブタイトル「ネヴァー・エンディング・ストーリー」は、ディランが1980年代後半からおこなっているツアータイトルに掛けたもので、生涯現役、生涯ツアーという、ディランの生きざまを反映しているはずだ。
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