ライド(Ride)@東京ドームシティホール 2018年2月19日
去年のサマソニ深夜ホステス・クラブ・オールナイターのときも客入りがよかったとは言えず、そしてこの日も2階バルコニー席はガラガラ、3階バルコニーに至っては客を入れていたかすら微妙という、寂しい動員状況だった。しかし、しかし、ライヴはとても素晴らしかった。
前座のノーベンバーズの後の機材調整を経て、20時過ぎに場内暗転。ステージ向かって右の袖からメンバー4人が姿を見せる。去年リリースした新譜『Weather Diaries』の冒頭2曲『Lannoy Point』『Charm Assault』でスタートだ。マーク・ガードナーがほぼ中央に陣取り、ギターをかき鳴らし上体をスウィングさせながら歌う。向かって左がサングラスをかけたアンディ・ベル。長身で、打ち下ろすようにギターを弾く。マークとは対照的に動きは少ないが、その分リフの切れ味の鋭さがハンパない。後方ひな壇にドラムセットがあり、ロズ・コルバートがビートを刻む。
そして、繰り返すベースリフのイントロが。『Seagull』だ。発しているのは、スティーヴ・ケラルト。ただでさえマークとアンディの双頭に注目が集まりがちな中、小柄で地味で、ステージ向かって右端にちょこんと立っているこの人は、しかし『Nowhere』冒頭のこの曲のイントロで存在感を放っている。イントロは執拗なまでに繰り返され、観る側はじらされまくりだ(そして、コレが心地いいんだが)。マークが歌い始めたその瞬間に歓喜が訪れ、更にアンディのコーラス、アンディのソロ、スティーヴのリフが絡みつく。ショウは、早くも沸点を迎えた。
新譜のタイトル曲『Weather Diaries』でクールダウンし、じっくり聴かせるモードにシフト。個人的な注目はアンディ・ベルで、オアシスではベーシストにおさまってはいたが、この人の本分はやはりギターだった。ほぼ1曲毎にギターを交換。ワタシが見てわかったのはテレキャスターとリッケンバッカーくらいだが、おそらく5〜6本を使いこなしていたと思う。2015年のフジロックで観たときは、ツインヴォーカル、ツインリードのように思えたのだが、少なくとも今はマークがリードヴォーカルでリズムギター、アンディはリードギターとコーラス、曲によりリードヴォーカルと、きっちり棲み分けができている。
・・・などと思いながら観ていたら、『Like A Daydream』の電撃のイントロに襲われる。原曲は3分ちょっととコンパクトなのに、普遍性を感じさせる世界観を表現していて、(歌詞の内容はさておき、曲の佇まいとしては)ラウド版『Imagine』と言ってもいいのではないだろうか。更に『Dreams Burn Down』で追い討ちをかけ、ラウドでありながらポップで官能的なメロディーに酔いしれる。
終盤は1曲1曲がクライマックスのようになり、演奏が終わったときは、そこで本編が終わってしまってもいいような達成感が漂う。しかしメンバーは、何事もなかったかのように次の曲に入り、という状態が繰り返される。マイブラばりのシューゲイザーなパフォーマンスもあって、アンディとスティーヴはしゃがみこんでギター/ベースを弾いていた。ステージは、バックドロップに「RIDE」のロゴが掲げられているだけのシンプルなセットで、ライティングもあまり凝ってはいない。しかしそれは、音楽こそが主役なのだという、メンバーの意思表示の現れではないだろうか。
悟りの境地を感じさせる、ワタシが最も好きなライドの曲『Vapour Trail』を経て、『Drive Blind』で本編終了。ここまでがあまりにも充実していたので、アンコールはなしかもと思っていたが、『Rocket Silver Symphony』で始動。そして、セカンド『Going Blank Again』の冒頭曲であり、彼らのライヴのオープニングになっていたことの多い『Leave Them All Behind』がここで来た。そしてオーラスは、忘れちゃいけない『Chelsea Girl』だ。
セットリスト
Lannoy Point
Charm Assault
Seagull
Weather Diaries
Taste
Pulsar
Catch You Dreaming
Like a Daydream
Dreams Burn Down
Cali
Time of Her Time
Lateral Alice
All I Want
OX4
Vapour Trail
Drive Blind
アンコール
Rocket Silver Symphony
Leave Them All Behind
Polar Bear
Chelsea Girl
あたまの方で寂しい動員と書いたが、バンドは出し惜しみすることなく聴きたい曲はほぼすべて演ってくれ、終わってみれば約2時間渡るヴォリュームにまでなった。
90年代前半にリアルタイムでライドの音楽を聴いていながら、なぜかライヴにはタイミングが合わなくて行くことができず、そこへ解散の報が届いてしまった。その後アンディがオアシスに加入したこともあって、ライド復活は望めないものと思われた時期もあった。
復活のニュースが届いたのは、2014年の秋のこと。そして2015年のフジロックで、はじめてライドを観た。そのときも衝撃を受けたが、バンドの真価が発揮されるのはやはり単独公演なのだと、この日改めて実感した。彼らの風貌は大きく変わってしまったが(笑)、技術的にはむしろ進化・向上しているものと思われ、すさまじいライヴを堪能することができた。去年新譜『Weather Diaries』をリリースしたこともあるので、復活ツアーは一過性ではなく、今後も続いていくことだろう。ワタシたちが音の洪水に溺れる機会は、まだまだこれからもあるはずだ。
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