『別冊映画秘宝ブレードランナー究極読本&近未来SF映画の世界』を読んだ
『ブレードランナー』の35年ぶりとなる続編『ブレードランナー2049』公開に際して発売された、映画秘宝の別冊ムックを読んだ。
最初に、共感できなかったところを先に書いてしまう。好みの問題と言ってしまえばそれまでだが、表紙のイラストのタッチが苦手だ。美しくもないし、お世辞にもかっこいいとは言えない。また、序盤のカラーページの大半を日本人が自作したブラスターに費やしているが、こんなのはよそやってほしかった。『2049』の撮影に使用されたとかいう自慢話にも興味はなく、華麗にスルー。
さて、ここからが本題。『2049』はリアルタイムということもあり、露出が抑え気味なのは当然。それでも、ストーリー解説や監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの仕事歴など、観た人であれば再考するのに適度の情報を振り撒いている。
ということで、必然的に前作についての話題が中心になるのだが、この徹底ぶりがすごい。ロサンゼルスのロケ地を巡るのに「2日で十分」とか(笑)、強力わかもとの社員やゲイシャ・ガールを演じた女優へのインタビュー、各国のポスター紹介など、マニアの鑑賞に耐えうる内容になっている。
そして極めつけが、『究極試写版』の設計図だ。『ブレードランナー』には大きく5つのバージョンがあるのだが、これらを結集させ、更に削除されたシーンを補充することにより、より完成度の高い作品の青写真を描いているのだ。入院しているホールデンを見舞うデッカードや、バッティが殺したタイレル博士がレプリカントでオリジナルが別に存在するなど、話には聞いているが、どうやら映像も流出しているらしい、一部マニアの手によって『究極試写版』あるいはそれに近いバージョンは完成されているようだが、もしこれが一般公開されでもすれば、ぜひとも大きなスクリーンで見てみたいところだ。
『2049』公開に際し、雑誌で特集記事が組まれたり、ほかにも特集本が出版されたりした。その中でも、この書は頭ひとつ抜きん出ている。公開当時は商業的に失敗した作品が、年月を経てカルト的人気を誇るようになり、多くのフォロワーを生んだ『ブレードランナー』。作品を支持したのは、映画ファンやSFファンだけでなく、刺激された多くのクリエイターたちも含まれるはずだ。35年ぶりの続編は、観る前は遅すぎたと思ったが、観た後では待たされただけのことはある作品だったと思っている。もしできるなら、数年後には『2049』の特集本が出版されると嬉しいかな。
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